初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第10回は、前回に引き続き「疲労解析」をテーマに“最悪ケース”も考慮したアプローチを取り上げる。
前回お届けした「疲労解析に挑戦、強度設計における繰り返し荷重を評価する」では、強度設計をテーマに、軸心と荷重が同一線上にある理想的なケースを考え、「静解析」「疲労解析」「座屈解析」を行ってみました。
3D CAD上のモデルは理想的な状態としてモデリングされていますが、その一方で、実際の部品精度や組み立て精度の影響を考えておくことも重要です。時として、実際に生じてしまった不具合をCAEで検証するケースがありますが、筆者の経験上、その原因のほとんどが、理想的な部品精度や組み立て精度を保てなかったことに由来するものです。
このような過去の不具合の経験をCAEのパラメータとして有効活用し、次の検証につなげていくことも設計者CAEとして重要な要素だといえます。基本的に、自身で設計したものの不具合情報は、その設計者に集まることが多いため、経験値としてしっかりと積み上げて、次に生かしていきましょう。また、解析担当者との連携という意味では、過去に生じた事象などを共有/参照できる仕組みも必要だといえるでしょう。
今回は、エアシリンダ取り付け部品の影響(具体的には、Lアングル部品の直角度や平面度の影響)、またはエアシリンダの取り付け精度によって、図1のような理想的な軸線に対して傾きが生じる場合を想定し、シリンダ先端の部品の強度解析を行います。
ちなみに、設計業務を滞留させない時間の中で、起こり得るであろう問題の検証を数多くこなすことは、設計品質を高める上でとても効果的です。今回の例題のような想定も、過去の経験を踏まえているからこそ生まれてくるものだといえます。
解析対象の部品形状と解析条件の1〜4までの内容は前回と同様とし、5番目の条件として、新たな項目を追加しました。
※注1:直角度:0.1、シリンダ取り付け面平面度:0.1と仮定して設定した。
このように軸線に傾きがあり、荷重を任意の角度で設定する場合、設定した面(今回の例では部品先端の面)に対して、垂直方向に荷重が設定されるのは正しくありません。では一体、どのように荷重の方向を設定すればよいのでしょうか。以降、筆者が普段使用する「SOLIDWORKS」を例に説明していきます。
モデリングを行う際、3Dモデル内に任意の平面を挿入することがありますが、荷重の方向を設定する場合も、同じように任意の平面を挿入していきます。
角度の基準になるスケッチ(作図線)を追加します。
手順1で描いたスケッチを通り、右側面に対して0.1度傾きのある平面を設定します。SOLIDWORKSでは、ツールバーから[挿入]−[参照ジオメトリ]−[平面]の順に選択を行い、図4のように平面の挿入設定を行います。
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