初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第11回は、解析の中でも範囲の広い「構造解析」の分類と、構造解析と同じくらいよく使われる「流体解析」のアプローチについて紹介する。
連載「実例で学ぶステップアップ設計者CAE」では、構造解析の話題を中心に、実践的な例題を取り上げながら設計者CAEの考え方やアプローチ、ツールを用いた具体的な手順などについて解説してきました。
一言で「構造解析」といってもその範囲は広く、読者の皆さんもこれまでの内容を通じてそれを実感していただけたかと思います。というわけで、今回は“構造解析の分類”について整理するところから始めることにします。本連載も残すところあとわずかです!
図1は、構造解析の分類を示したものです。
この中で特に多く使われているのが「線形解析」ではないでしょうか。簡単に説明すると、線形解析によって“物体に働く外力を取り除くと元に戻る”という状態を解きます。一方、“物体に働く外力を取り除いても元に戻らない”ような場合には、強度設計上の問題があるといえますが、計算途中で「大変形するけど、続けますか?/やめますか?」といった選択を迫られることがあります。これは、形状が大きく歪む状態や回転してしまうような“非線形性”が現れていることを意味します。
一般的に、ゴム材のような「超弾性」といわれるような物性を持つ材料の場合、この大変形が生じます。また、降伏応力以上の力を加えたときには、その力を取り除いても元に戻らないような状態となり、同じく大変形となります。これら以外のケースでは、境界条件の設定によって大変形が生じていることがほとんどです。
境界条件とは、構造解析では「力」「圧力」「変位」など、熱伝導解析では「熱流束」「温度」など、流体解析では「流速」「圧力」「壁」などの設定値や条件のことをいいます。例えば、アセンブリの解析を行う場合、パーツ間に接触定義を設定すると、接触位置では外力によってパーツの移動を伴うことがあり、それが大変形につながります。接触定義の設定については、「何を解析したいのか」という視点で設定を検討しなければなりません。
構造解析は、荷重が静的であるのか、動的であるのか、言い換えると“時間の捉え方”によって、次のように分類できます(図3)。
動解析について簡単に補足すると「時間とともに外力が変化していくようなものを解く手法」であり、“減衰(振動を抑える抵抗力)”も考慮されています。また、動解析には以前取り上げた「モード(固有値)解析」の他に、「周波数応答解析」や「時刻歴応答解析」などがあります(図4)。
皆さんも「衝突解析」というCAE用語を一度は聞いたことがあると思います。筆者自身、その十分な経験はありませんが、衝突解析は時刻歴応答解析の一例です。
では、「定常解析」や「非定常解析」というCAE用語を聞いたことはないでしょうか。定常解析とは“定常状態=時間とともに変化しない状態”の評価を行うものです。例えば、伝熱解析で恒温状態(熱が伝わり切って変化しない状態)の温度分布を評価する解析や、この後に解説する流体解析である一定条件の安定した状態の評価を行うようなものが定常解析になります。一方、非定常解析とは“非定常状態=ある安定した状態に到達するまでの過渡的な過程”を評価します。伝熱解析における時刻歴的に変化する温度分布や、流体解析の安定に至るまでの過程などを評価するために使われるため、「過渡解析」ともいわれます。これから設計者CAEに取り組むのであれば、少しずつで構いませんのでCAE用語の理解も深めていくとよいでしょう。
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