これらの情報を基に遠隔から指示を出すための仕組みなども必要になる。Web会議システムなど通常のオフィス業務で使用される各種ツールはもちろんだが、多くの工場などで活用が検討されているのが、統合制御室のような支援や指示を専門とする部門や設備の用意である。プロセス製造におけるプラントなどでは統合制御室などが用意されている場合が多いが、組み立て製造業でもより簡素な形で同様の仕組みを構築する動きが広がる見込みだ。
例えば、中国やASEANの工場などのリアルタイムの生産データを見ながら、異常があれば映像を確認し、必要な作業を現地と打ち合わせながら進めるという形だ。新規ラインの立ち上げなどの場合は、工場と統合制御室、各部の専門家を結び、同じデータや情報を基に、一堂に会し「現地現物現実」を再現することを目指す。
安川電機のスマート工場「安川ソリューションファクトリー」の様子。操業モニターや生産ダッシュボードにより稼働状況などを一元的に把握できる。これらを遠隔工場なども含めて実現する取り組みが広がる(クリックで該当記事に)実際には「リモートで問題なく再現できるのは体感的には7割程度で、残りの3割は現地に派遣する方が課題解決は早い」(ある工場関係者)とする声もあり、現在の遠隔支援技術が既存業務を全てカバーできているわけではない。ただ、COVID-19への対応が長期化する中、これらを埋め、どれだけ精度の高い「現地現物現実」を再現できるようになるかが今後のポイントになっている。
リモート化を支援するような動きも各所から出始めている。その中で特に「現地現物現実」の再現という意味で期待されているのが、スマートグラスやAR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術の活用だ。現地のスマートグラスなどを通じた映像を共有し、遠隔地からの作業指示や支援をリアルタイムで行う仕組みだ。既に一部では実際の導入は広がっているが、使い方はまだまだ限定的だった。しかし、COVID-19などによる制限が続く中で、リモート環境下での業務内容向上への取り組みは広がると見られており、今後はさらに有効な仕組み作りが進む。
その他では、機械メーカーなどでは、出荷立ち合い検査のリモート化や試加工のリモート化などへの取り組みが進められているなど、リモートでリアルを再現するという取り組みはさまざまなところで進んでいる。2021年は「現地現物現実」をいかにバーチャルで再現するのかが大きな焦点になってきそうだ。
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