安川電機は2018年7月に稼働開始したスマート工場「安川ソリューションファクトリ」を報道陣に公開した。生産スピード3倍、生産リードタイム6分の1、生産性3倍を実現したという同工場の取り組みを紹介する。
安川電機は2018年12月3日、同社の新たなモノづくりコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を体現するスマート工場「安川ソリューションファクトリー」を報道陣向けに公開した。「安川ソリューションファクトリー」は2018年7月に完成し、既に数多くの生産性改善などを実現している。本稿では「安川ソリューションファクトリー」の位置付けと、スマート化に向けてどのような取り組みを具体的に行っているのかについて紹介する※)。
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安川電機ではモノづくりの変化に合わせて「メカトロニクス」や「アンマンドファクトリー」などさまざまなコンセプトを打ち出してきた。その流れの中で2017年に打ち出したのが「アイキューブ メカトロニクス」である。「アイキューブ メカトロニクス」が目指すコンセプトは、メカトロニクス製品にデータ活用を融合させ、持続的な生産性向上を実現するソリューションを提供することである※)。
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現場の自動化にデジタルデータマネジメントの考えを加えたスマート工場を実現し、機械や設備を実際に稼働させた後のデータ活用により生産性の向上や品質の確保、止まらない製造ラインの実現など、製造ノウハウを組み込んだソフトウェアの提供などで新たな価値を提供する。
ちなみに「アイキューブ メカトロニクス」における「i(アイ)」は、「integrated(統合的、システム化)」「intelligent(知能的、インテリジェント化)」「innovative(革新的、技術革新による進化)」を示しており、機器をコンポーネントとして進化させるだけでなく、統合してシステム化を実現したり、AI(人工知能)技術を活用して知能化したりすることで実現できる新たなモノづくりの姿をイメージしている。
安川電機 執行役員でモーションコントロール事業部長の熊谷彰氏は「安川電機が取り組んできたメカトロニクスやコンポーネントの強みだけでなく、これらをつないでデータを活用できるようにする。これらのデータを工場内でつないでいくことでモノづくりを変えられるだけでなくビジネスも変化させられるかもしれない」と述べている。
このコンセプトを具現化する工場として新たに建設されたのが、埼玉県入間市の入間事業所内で2018年7月から稼働を開始した「安川ソリューションファクトリー」である。総投資額は30億円に上るという。
「安川ソリューションファクトリー」は、サーボモーターやサーボアンプの生産工場である。2階建てで、1階では小容量サーボモーター、2階では小容量サーボアンプを生産する。延べ床面積は7642m2となっている。生産能力はサーボモーターとサーボアンプを合わせて月産10万台で、1000種類の製品を生産している。これらの多様な生産品目に対応するためには、効率的だが柔軟性の高い生産現場が必要になる。
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