生産性3倍、リードタイムは6分の1、安川電機の新スマート工場が示すもの:スマート工場最前線(4/4 ページ)
これらの工場の稼働状態全体を把握するために「統合監視室」なども用意し、常に約5人のメンバーで交互に監視を行っているという。「この統合監視室で異常や不具合を見つけたり、作業遅れの状況を予見したりする。異常の分析を行ったり、応援を送ったりすることもある」(担当者)としている。
統合監視室での様子。操業モニターや生産ダッシュボードにより稼働状況などを一元的に把握できる(クリックで拡大)
これらの取り組みにより、従来工場での生産状況に比べ、生産スピードは3倍に、生産リードタイムは6分の1に、生産効率は3倍に向上することができたという。白石氏は「具体的な数値でいうと、例えばサーボアンプなどでは、生産スピードでは90秒に1台の生産スピードだったのが30秒位に1台で作れるようになった。リードタイムについては、1週間以内という単位だったのが1日以内に生産できるようになった。生産効率については従来の人員の3分の1で同様の生産量が実現できるようになった」と成果について語っている。
今後に向けて白石氏は「さらなる自動化領域の拡大については検討を進めている。検査工程などでは多くの人がかかっているが、最終検査は最後の砦として人が行うべきだと考えている。まずはその前の梱包、出荷作業の自動化を進める」と今後の取り組みについて述べている。
これらのスマートファクトリー化を進める中で、さまざまなソリューションの提供を求める企業なども増えそうだが、安川電機では基本的にはコンポーネントとしての強さを追求する方針だという。
熊谷氏は「安川電機の強みは工場全域に及ぶ幅広いコンポーネントを抱えていることだ。この強みを生かして、われわれの顧客である製造機械メーカーなどと共同で新たなスマートファクトリーのカタチを実現できるようにしたい。その実証の場としての安川ソリューションファクトリーである。この新たなスマート工場の姿を実現する中で、フィードバックを得ながら安川電機としてはさらにコンポーネントを強めていけるようにする」とコンポーネント中心である考えを示していた。
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