それでは「安川ソリューションファクトリー」が製造現場に対してもたらす価値としては何があるのだろうか。具体的な成果として得られるのは、「データ活用」を軸とした、自動化領域の拡大と変種変量生産への対応、そして止めない工場の実現である。
「自動化領域の拡大」に向けてはまず、コンポーネント同士をつなぎプロセスを統合することを実現した。人依存による揺らぎを抑え、バラつきのない生産体制を構築した。ただ、これだけのことでも簡単なことではない。
安川電機 モーションコントロール事業部 モーションコントロール工場長の白石聡氏は「以前から作業そのものの自動化は進めてきたが、さらに工程間を結ぶと、情報やデータ活用の粒度や頻度なども変更が必要になるなど、自動化領域を広げるために生産性が落ちるようなことも起こった。これを生産性や品質を維持した上で自動化領域を広げるには、状況の変化にリアルタイムで追随するためにも、データ活用の質を上げていくことが必須だった」と考えを述べている。
例えば、モーターのステーターの組み立てラインでは、もともと各工程作業はロボットなどにより自動化されていたが、これらの工程間の搬送については自動化されていなかった。そこで人手などで運ぶケースが多かった。これをリニア搬送ラインにより、高速で高精度に運ぶことができるようになった。ただ、従来の人手部分のバッファーがなくなるために、工程そのものの品質もさらに高める必要があった。そのためにより粒度の高い製造データや機器の稼働データを取得。これらを組み合わせることで工程間を結んで最適な生産が行えるようになったという。
また、ベルトコンベヤーなどで搬送できない工程間については、AGV(無人搬送車)を使って自律的な輸送を実現している。「安川ソリューションファクトリー」内でAGVは18台が稼働し、28カ所のAGVステーションの間を行き交いながら、部品を運んだり、空箱を戻したりしている。
「これらのAGVとの連携についても、各種工程の機器とAGVが同じ情報を共有したシステムとなっていなければ、連携することはできない。従来以上の高度な自動化とシステム連携を実現するには、アイキューブ メカトロニクスのような一元的なプラットフォームは必要だ」(白石氏)としている。
産業用ロボットの活用なども非常に多く約30台が稼働。その他、コントローラーは60台、サーボモーターは1000台が工場内で使われているという。これらは安川電機製だが「安川ソリューションファクトリーの目的は自社工場内で使うことで自社製品の開発にフィードバックする点もある。これらのデータを取得することでより強いコンポーネントの開発にもつなげていく」と熊谷氏は述べている。
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