コロナ禍で加速する製造現場のリモート化、「現地現物現実」をどう再現するかMONOist 2021年展望(1/2 ページ)

COVID-19により特に人の移動が制限されていることから、「リモート化」の推進はあらゆる業務で必須となってきている。こうした中で従来とは大きく異なってきているのが「現地現物主義」が徹底的に進められてきた「製造現場のリモート化」である。

» 2021年01月25日 11時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大から約1年が経過したが、引き続き感染拡大の混乱は終息していない状況だ。こうした中でモノづくりの在り方としてもさまざまな変化が求められている。特に人の移動が制限されていることから、「リモート化」の推進はあらゆる業務で必須となってきている。こうした中で従来とは大きく異なってきているのが、「現地現物主義」が徹底され「遠隔」などは考えられなかった「製造現場のリモート化」である。

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リモート業務の拡大が製造現場でも必須に

 COVID-19の拡大から1年を経て、コロナ禍による制約や条件の中で新たな製品開発や生産立ち上げを行わざるを得ない状況となっている。人の動きが制限される中で、従来のように製造現場に直接人を派遣し、新たな設備の立ち上げを行ったり、生産性や品質問題の改善を図ったりすることは難しくなった。製造現場そのもので働く人の数を減らすということに加え、生産技術部門や設計部門など、工場外の専門家を派遣し、生産業務をサポートすることが難しくなっている。

 こうした状況で2020年から試行錯誤を行いながら進められてきたのが「製造現場のリモート化」である。「製造現場の人の数を減らす」という面では、従来の自動化やスマート化などの動きの中で進められてきており、急速に拡大することが難しい状況である。ただ、コロナ禍を受けて急速に広がっているのが「工場外の専門家支援をリモート化する」という取り組みである。

 日本の製造現場では「現地現物現実」の3現主義に基づき、とにかく現場に身を置くことでさまざまな課題や違和感を見つけ出し、それを改善に結び付けることで生産性や品質を高めてきた。「工場外の専門家支援をリモート化する」という取り組みは、こうした課題や違和感をリモートでも見つけ出せるようにし、改善につなげることを目指すものだ。そのため、具体的には以下の2つの方向性での取り組みが進められている。

  1. 前提となる情報を遠隔で共有できる仕組みを作る
  2. 実際に専門家が遠隔でサポートできる仕組みを作る

重要性を増す「見える化」への取り組み

 工場での新製品の量産ライン立ち上げなどに際しては、従来は設計部門や生産技術部門、品質部門など、さまざまな部門の専門家が製造現場に派遣され、それぞれの知見を加え、安定稼働に導いていくというやり方が一般的だった。しかし、COVID-19により、実際に製造現場に行くことができなくなれば、実際にそれぞれの目で見たりワークに触れたりして、製造過程のワークや機器の状況を把握することはできない。

 そこで、これらの生産ラインの状況やワークの状態をデータを基に遠隔で「見える化」するというのが、リモート化を進める上での前提となる。これらはスマート工場化への取り組みとしても注目されてきたが、コロナ禍で一気に加速する見込みだ。製造にかかわる人や設備の稼働状況や生産状況などの情報を一元的に集め、リモートで可視化するダッシュボードのようなものへの注目が集まっている。

photo 富士通 小山工場におけるダッシュボードの様子。工場の情報をリモートで見られるようにすることが最初のステップになる(クリックで該当記事へ)

 加えて、活用が増えているのが、映像の活用である。ワークの状況の確認や、人の生産作業の指導などを行う場合は、映像などで確認しなければ判断できないものも多い。そういう意味では、マシンビジョンなど生産ラインに組み込む精緻な映像情報などに加え、工場の生産ラインを広く映すカメラや、工程間で遠隔地からのリクエストに応じて、ワークをさまざまな角度で映す書画カメラなど、さまざまなカメラや映像活用が増える見込みだ。

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