東北大学とスピンセンシングファクトリーは、新型磁気センサー素子と外部環境磁場ノイズのキャンセル技術を開発し、日常的な生活環境においてヒトの心臓の動きから発生する微弱な磁気信号を検出することに成功した。
東北大学とスピンセンシングファクトリーは2020年12月14日、新型磁気センサー素子と、外部環境磁場ノイズのキャンセル技術を開発し、日常的な生活環境においてヒトの心臓の動きから発生する微弱な磁気信号を検出することに成功したと発表した。
新型磁気センサーには、強磁性トンネル接合(MTJ)素子を利用。信号出力向上のために、軟磁気特性に優れた新規アモルファス磁性材料を活用した。
また、磁束を収束する磁性材料と構造の最適化を行い、MTJ素子のダイナミックレンジを維持しつつ、従来の素子の10倍以上感度を向上させた。
次に、磁場シールドルームを使用せずに、環境磁場ノイズを低減するために、2つのセンサーを利用する手法を開発した。センサー特性のそろった1組の高感度磁場センサーのうち、1つ(信号センサー)を心臓付近に、もう1つ(参照センサー)を体表から約5cm離れた位置に固定して測定し、その差分信号を計測した。
一般的な会議室で試験したところ、信号センサーだけでは環境ノイズの影響により心臓磁場信号を検出できなかったが、参照センサーの出力を引くことで心臓磁場信号の抽出に成功した。
心臓を非侵襲で精密に検査するには、大型で高価な磁気シールドルームが必要となり、現状で検査できるのは大病院に限られている。今回開発したMJTセンサーの感度をさらに10倍改善できれば、心臓磁場よりはるかに弱い脳磁場も同様の手法で日常環境下での測定が可能になるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.