かくして「はやぶさ2」は帰還し再び旅立った、完璧な成果は3号機につながるのか次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(19)(4/5 ページ)

» 2020年12月23日 11時00分 公開
[大塚実MONOist]

拡張ミッションは時間との勝負に

 はやぶさ2が1998 KY26に到着するのは、2031年7月の予定だ。今からじつに10年半後。はやぶさ2は打ち上げからまだ6年だから、今までよりも1.5倍も先という長旅になる。

 はやぶさ2はもともと、リュウグウとの往復を前提に設計されている。ここから先はその想定の外であり、各機器がどこまで長持ちするかは未知数だ。現在、はやぶさ2はスイングバイにより、地球軌道の内側に向かっている。熱設計は0.85〜1.41auを想定していたのだが、これよりも太陽に接近するため、熱も大きな問題となる。

 これから10年以上も運用できるかどうかは、正直なところ全く分からない。おそらく、何も問題が起きないことはないと思うので、どこまで致命傷を避けられるか、ということになるだろう。ただ、宇宙での長期運用はそれだけで価値があり、耐久試験のデータ取りと考えても非常に貴重な機会だ。

 注目したいのは、イオンエンジンが最後まで動くか、ということだ。初号機では、中和器の劣化により、完走できないスラスターが出てしまった。はやぶさ2では、耐久性を向上させたものの、累積運転時間は初号機より短く、本領を発揮する間もなかった。ここからが、改良型μ10の真価を発揮するときだ。

 ところで、1998 KY26に到着する5年前の2026年7月には、別の小惑星「2001 CC21」のそばを通過(フライバイ)するというイベントがある。2001 CC21は、L型というちょっと変わり種の小惑星だ。サイズなどはまだよく分からないものの、L型小惑星を探査機で直接観測した例はまだないので、科学的にも、非常に意義が大きい。

 はやぶさ2はランデブーを前提に設計された探査機のため、高速にすれ違うフライバイ観測向けの機能、例えばカメラの首を振るような機能は持っていない。秒速5km程度という相対速度で通過するため、どうやって観測するかはこれからの検討事項だが、拡張ミッションでは、まずはこのフライバイを楽しみに待ちたいところだ。

 ところで、はやぶさ2のこれまでのミッションは往復の旅だったが、今度の旅は小惑星への片道切符。もう戻ってくることはないのか……と寂しい気持ちになりそうだが、実は2027年12月と2028年6月の2回、はやぶさ2はスイングバイのために地球に戻ってくる。さよならを言うのはそのときでいいだろう。

拡張ミッションの軌道 拡張ミッションの軌道。はやぶさ2はまた7年後には地球に帰ってくる(クリックで拡大) 出典:JAXA

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