探査機から分離されたカプセルは、予定通りに飛行し、約12時間後の12月6日2時28分に地球大気圏へ再突入。2時32分にビーコンを受信、つまり高度10kmでパラシュートを開き、2時54分に着陸した模様だ。3時7分には着陸地点を特定し、回収班のヘリコプターが出発、4時47分、無事にカプセルを発見した。全て予定通りだった。
カプセルは初号機でも正常に機能したが、はやぶさ2でも完璧だった。このカプセルの仕組みについては、本連載で2回にわたって詳しく紹介しているので、興味がある方は参照してほしい。
地上でカプセルを回収するために、最も重要なのは、着陸地点を正確に推定することだ。はやぶさ2では、この部分も初号機から強化された。
最も基本となるのは、カプセルが出すビーコンを利用した方向探索だ。着陸予定エリアの周囲に、複数のアンテナを配置。各局がビーコンの方角を調べ、その交点付近にカプセルがある、というわけだ。初号機ではアンテナが4局だったが、はやぶさ2では5局に強化されている。
もしビーコンが出なかったときのために、火球となったカプセルの光学観測を行う。雲が出ていると地上から観測できないので、同時に航空機による観測も行う。
また、はやぶさ2では、新たにマリンレーダーによる方向探索を追加した。これは、パラシュートで反射する電波を利用するため、ビーコンが出ていなくても、パラシュートさえ展開できていれば、カプセルの追跡が可能だ。
着陸してからは、ヘリコプターを飛ばし、ビーコンも見ながら、上空から目視でカプセルを探す。はやぶさ2ではさらに、ヘリコプターを出せなかったときのバックアップとして、ドローンによる探索を追加した。ドローンは指定したエリアを隙間なく撮影することができるので、こうした探索には適している。
まさに、6段構えの万全の体制だった。結果的には、カプセルが正常に機能し、あっさり場所を特定することができたのだが、そういった成功の陰には、こうした地道で入念な準備があったことは覚えておきたい。
カプセルから取り出したサンプルキャッチャーの重量を計測した結果、打ち上げ前の重量との差分から、中には約5.4gものサンプルが入っていることが明らかになった。もともと、想定していたのは100mgだったので、ミッションとして「大成功」といえる。本連載の記事タイトルで「グラム単位も!?」と書いたが、これが現実になった。
今後、半年程度をかけ、サンプル1つ1つのカタログ化を行ってから、初期分析や詳細分析を開始する予定。C型小惑星からは、有機物や水の発見が期待されている。2021年は、どんな科学成果が発表されるのか、楽しみなところだ。
ところで、今回は探査機本体のカメラを使い、再突入時のカプセルを宇宙から撮影することにも挑戦していた。広角カメラ「ONC-W2」のため、写ったとしても「点」だろうと予測されていたものの、放射線帯の通過時でノイズが多いこともあり、まだ特定には至っていない。こちらも続報を待ちたいところだ。
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