欧州もゼロエミッション車普及で高い目標、「10年間で50倍は現実とかけ離れている」自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2020年12月19日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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半導体も、エンジン車廃止論のようにシンプルではない

 MONOistで今週公開した自動車関連の記事も振り返ります。まずはルネサスエレクトロニクスの最新SoC(System on Chip)に関する「ルネサスが自動運転向けに“最高性能”のSoC、NVIDIAと競わず現実解を提供」です。

 自動運転システムの処理を担うコンピュータにどの程度の演算性能が必要なのか、どの程度の消費電力まで許容できるか、水冷は許容できるか、これまでさまざまな意見が出てきました。自動運転システム向けに半導体を手掛ける会社からは、「消費電力が高い高いと言われてきたが、処理性能とのバランスを見てほしい。消費電力が本当に高すぎるなら、こんなに量産車での採用実績はない」という声も聞きました。これもまた、メディアの伝え方のネガティブな影響があった部分かもしれません。

 さて、ルネサスの自動運転システム向け最新SoCはというと、1秒間に何兆回の演算ができるかという「TOPS」ではNVIDIAの製品に及びません。しかし、そこに着地した狙いや根拠に加えて、「TOPSでの競争はしない」という思いもあるようです。ルネサスとNVIDIAのどちらが正しい製品戦略かというつもりはありません。CO2削減のアプローチがさまざまであるように、よりよい自動運転車が完成するためにも、車載半導体にもさまざまな考え方やアプローチがあってしかるべきです。実際にSoCを使う人がどう感じるか、どう判断するかが気になるところです。

あのロボット犬が宅配便を届けに来る?

 ソフトバンクがボストンダイナミクスを手放したことも、気になるニュースでした(ヒュンダイがボストンダイナミクスを買収、サービスから物流までロボット事業強化)。随分と手放すのが早いなと思いましたが、ソフトバンクがアルファベットと買収に合意したのは2017年6月でした。みなさんは早いと思いますか?

 ボストンダイナミクスの“ロボット犬”と似たタイプを自動車業界が活用しようとしている例としては、コンチネンタルを思い出します。コンチネンタルは、乗客がいない時間帯の無人運転車を物流向けに転用し、その車内に荷物とロボット犬を載せて宅配に使うというコンセプトを提案していました。荷物を背負ったロボット犬は、無人運転車から降りると届け先に向かっていそいそと歩いていくのです。現代自動車も、ロボット事業を展開する中で物流ロボットに取り組んでいます。ロボット犬が玄関先までやってくる未来……どうでしょうか(見慣れるまでちょっと不気味かもしれません)。

ボストンダイナミクスのロボット。物流で活躍する日も近い?(クリックして拡大) 出典:ボストンダイナミクス

 観測史上最大を記録する大雪が各地で続いています。高速道路上で立ち往生して3日目に突入したという区域もあると報じられています。こんなとき、どんなパワートレインが強いのかと議論する人々も見かけます。また、雪に限らず災害などいざというときに車内に何があるといいのか、あらためて考えたいと思いました。私の愛車にはなんだかんだと荷物が置いてあるので、まずはこれを機に整理せねばなりません。

 雪かきなさる方、雪道を運転される方、くれぐれもお気をつけて!

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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