ヤマハ発動機は「第9回アフリカ開発会議」に合わせた展示について発表した。
ヤマハ発動機は2025年7月24日、「第9回アフリカ開発会議(TICAD9)」(会期:2025年8月20〜22日、会場:パシフィコ横浜)に合わせた展示について発表した。TICAD9併催イベント「TICAD Business Expo & Conference」内の展示ゾーン「Japan Fair」に出展する他、ヤマハ発動機の横浜ブランド発信拠点「Yamaha E-Ride Base」においてアフリカに関する企画展示を行う。
TICAD Business Expo & Conferenceは日本貿易振興機構(JETRO)が主催する。アフリカ各国の政財界リーダー層に向けて日本企業の技術やサービスを発信するとともに、アフリカのビジネス環境に関する情報を日本企業に提供する。Japan Fairは日本企業の最先端の製品や技術、サービスを集める。
Yamaha E-Ride Baseでは、アフリカの社会課題解決に向けたヤマハ発動機の取り組みを一般向けに発信する。アフリカで活躍する二輪車や船外機の実機を展示する他、ヤマハ発動機がアフリカ各地に設置する小型浄水装置にちなんで水の大切さを考えるワークショップを実施する。
アフリカの人口は右肩上がりで増えており、2023年時点では25歳未満が人口の60%を占めている。また、GDP成長率も年々増加しており、アフリカ連合がG20(主要20カ国/地域)に加盟するなど、国際的な発言力も高まりつつある。
成長が期待される一方で、発展途上国であるため政治や経済、行政の基盤は不安定だ。反政府ストライキや当局への抗議デモが盛んに行われる他、通貨安や輸入依存度の高さによる物価上昇、高金利も課題となっている。貧困層が多く、経済的困窮からくる紛争が起きるなど、治安も悪化している。行政が脆弱(ぜいじゃく)で不透明なプロセスを用いるため、手続きの複雑化や長期化も起きている。
地域ごとの経済的格差も大きく、所得水準の低さにより将来よりも今を優先し、予防や保守のための支出は後回しになりやすい傾向もある。品質やサービスなど日本企業の強みが発揮されにくい環境であるという。
ヤマハ発動機は、将来の有望市場の1つと位置付けて1960年代にアフリカに進出した。社会課題の解決に直結する事業を展開し、現地に寄り添うことを目指してきた。同社の海外市場開拓事業部(Overseas Market Development Operations、OMDO)が、アフリカでは52の国と地域にセールス、サービス、スペアパーツの提供体制を展開している。ナイジェリアには二輪車のノックダウン生産拠点が、ケニアとモザンビークにはボートの製造拠点がある。
ヤマハ発動機のアフリカ事業は、安定して100億円規模の売上高を維持している。コロナ禍では減少したが、2024年には140億円超まで回復した。
アフリカ事業で初期にスタートしたのが、漁業の近代化だ。アフリカでは手漕ぎの木造船が多かった。手漕ぎでは遠くまで漁に行けないため、漁場や漁港、魚種、漁獲量が限定され、収入が上がりにくいのが課題だった。また、市場に持ち込むまでの時間もかかり、価格も上げにくい。木造船は菌が繁殖しやすく、魚介類の輸出先で衛生基準を満たせないためビジネスチャンスを逸する。また、木造船は強度や安定性が足りないため操業中の事故も発生する。
漁業の近代化に向けては、手漕ぎから船外機による動力化や、木造からFRP(繊維強化プラスチック)製への移行を進めた。各国の漁業支援策もあって船外機の普及が進んだ。
ヤマハ発動機はより安全なボートの普及に向け、現地パートナーとの協力によるFRP船の現地生産や、FRPの技術者育成に取り組んできた。FRP化することで生け簀(いけす)を搭載できるようになり、魚を新鮮な状態で輸送できるようになった。輸出拡大や廃棄の削減によって漁業の収入増も図った。廃棄を前提にたくさんの魚介類を獲るのではなく、必要な量を高値で販売できるようにすることで水産資源の保護にもつなげる。
漁業に必要な船を提供するだけでなく、日本の漁業従事者の協力の下で水産養殖の技術を分かりやすく解説する書籍を出版した他、漁法や魚の保存、流通などを指導するなど、漁業の振興にも取り組んできた。
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