ここまでの「価格転嫁」から「投資活動」までの一連の分析結果を踏まえると、受注側事業者は、「望ましい循環」を作り出している企業と、「望ましくない循環」に陥っている企業に大別されると考えられる(図36)。中小企業白書2020では、望ましくない循環に陥っている受注側事業者は、自らが置かれている状況を十分に理解して対策を講じる必要があるとする一方で、大企業を含む発注側事業者においても受注側事業者が「望ましい循環」を作り出すために必要な環境を整備することも重要であり、大企業と中小企業が互いに稼げる、共存共栄の取引関係を構築していくことが重要だとしている。
新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中でも、新製品の開発や販路開拓など、新たな「価値創造」に取り組む企業も存在している(図37)。
いまだに収束の道筋が見えない厳しい状況においても、変化を前向きに捉えて新しいビジネスを生み出している企業も多く存在している。将来の予測が立てにくい状況ではあるが、もう一度、自社の目指す方向性や強みを確認し、付加価値の増大を図る取り組みが重要になるといえよう。
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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