構想をカタチに! 「ポンチ絵」に必要な3つの心得と3D CADによる設計ステイホームでDIYを極める! 玄人志向なモノづくり(3)(1/4 ページ)

ステイホームで注目を集める「DIY」をテーマに、設計から製作までのプロセスを、実際の製造業におけるモノづくりの視点を交えながら解説することで、DIY素人の皆さんに“玄人のエッセンス”を伝授する。第3回では、頭の中の構想を具現化する際に用いる「ポンチ絵」の作成と、3D CADによる設計アプローチについて取り上げる。

» 2020年10月09日 11時00分 公開

ポンチ絵は設計の土台となる大切な作業

 皆さん、こんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。

 作るモノが決まったら、構想を手描きでスケッチします。これは俗に「ポンチ絵」とも呼ばれます。デジタル時代にもかかわらず、わざわざ手で「描く(書く)」という行動は、実は頭の中のイメージを整理して、具現化しやすくする手段だったりします。筆者はこれを設計の土台になる大切な作業だと位置付けています。

 ちなみに、ポンチ絵は展覧会に出すような芸術作品ではありませんから、絵を描くことが苦手な人でも大丈夫です。とにかく、自分はもちろん、他人が見てもモノの概要が分かる(伝わる)よう描くことに努めましょう。

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ポンチ絵を描き始める前に

 さて、その前に大切なことを考えなくてはなりません。それは、ネジを通す穴の寸法です。

 この穴径をいくつにするかの目安は……、

ネジ径×1.1=ボルト通し穴径

です。

 例えば、M5を通す穴なら、5×1.1=Φ5.5。M6なら6×1.1=Φ6.6となります。この計算よりも穴径を小さくすると、ネジを通したときのガタツキが少なくなるので、ネジ止めする相手部品とのズレを抑えられます。反対に、穴径を大きくするとガタツキが増えて組み立てるときに、相手部品との位置調整の融通が利きます。

 また、仕上げに塗装する場合は、穴の内面に塗装の膜が付いて穴が小さくなる恐れがあるので、穴径を大きくするなど、臨機応変に工夫が必要です。

 では、特殊ネジと説明した「カメラネジ1/4」は、どのような穴を開ければよいのでしょう。

 この“1/4(4分の1)”とはインチサイズの表記です。そして、覚えておきたいのは、

1インチ=25.4mm

だということです。「24.5mm」ではありません。「25.4mm」という何とも中途半端な数字が「1インチ」なのです。つまり、「1/4インチ」と書かれていたら、「ああ、25.4mmの4分の1だから、25.4÷4で6.35mmなんだな!!」とサイズ感がイメージできます。念のため、カメラネジ1/4のスペックを載せておきます。

「カメラネジ1/4」のスペック 図1 「カメラネジ1/4」のスペック ※出典:ミスミ(https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110300205040/ から引用) [クリックで拡大]

 図面によると、このネジの直径は最大でもΦ7.0ということですから、これを通す穴の径を先述の「ネジ経×1.1=ボルト通し穴径」に当てはめると、Φ7.7の穴を開けるということになります。ところが、こんなサイズのドリルはなかなか売っていません。ですから、ここはΦ8.0としておきます。

「ポンチ絵」を描く際の3つのポイント

 ポンチ絵を描く際は、次の3つのポイントを心掛けてください。

  1. 基本的に、斜め上から見た絵を描く(これは「等角投影図」や「アイソメトリック図」と呼ばれます。この用語は覚えておきましょう)
  2. 寸法、材質、使う市販部品の名前と型番など、作るために必要なことは全部書き込む
  3. モノの形状がよく分かるように、外形線はやや太い線で描いておく

 それでは「カメラスライダー」のポンチ絵を部位ごとに描いていきましょう。

「スライドユニット」のポンチ絵を描く

 まず、カメラ固定台の寸法を決めるために、寸法が分かっている「スライドユニット」のポンチ絵を描きましょう。

スライドユニット 図2 スライドユニット ※出典:モノタロウ [クリックで拡大]

 上記の参考リンク先で部品の寸法を確認し、図3のように図面内に数値を書き込みます。

部品寸法を確認し、図面内に数値を書き込む 図3 部品寸法を確認し、図面内に数値を書き込む [クリックで拡大]

 この図面を手掛かりにして、スライドユニットの外形寸法と取り付け穴の位置を描き出しておきます。ポンチ絵にしておくと、このように分かりやすいと思います(図4)。

ポンチ絵に外形寸法と取り付け穴の位置を描く 図4 ポンチ絵に外形寸法と取り付け穴の位置を描く [クリックで拡大]

 また、ポンチ絵を描く際、直尺の目盛りを見ながら、「このくらいの寸法なんだな」という実寸感を確かめておくこともオススメです(筆者もよくやります)。

直尺の目盛りを見て実寸感を確かめておく 図5 直尺の目盛りを見て実寸感を確かめておく(筆者所有物) [クリックで拡大]
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