さてRTOSのコア部はそんな訳で大した機能は提供されていないのだが、Mbed OS自体は先の図1でも分かるように猛烈な量のライブラリを利用可能で、当然APIも充実している。実際に、Mbed OS 6.2のFull API Listを簡単にまとめてみると、以下のような項目が並んでいる。
対応ハードウェアも充実している。最新の一覧はこちらのWebサイトで確認できるが(図4)、原稿執筆時点で言えば対応モジュールが9種類、対応コンポーネンツが551種類、対応ボードが164種類となっている。当然のことながらArmのCortex-Mベースの製品に限られるが。
機能は充実しているし、ドキュメント類も結構そろっている(Mbed OS 6に関して言えば、まだ“Page not found”がしばしば出現するが、Mbed OS 5はそれも少ない)。もちろん無料で利用できる。しかもIoTプラットフォームとの連携については、ArmのISGが手掛ける「Pelion」だけでなく、最近は公式サンプルとしてAWSへの接続例が示されたりするなど、幅広い用途で利用可能となっている。
懸念事項は冒頭に書いた、ISGの行く末がまだ明確でないというあたりだろうか。これはArm本体の売却とも絡む話であるが、現状のMbed OSはいわばコストセンターであって、Mbed OSそのもので利益は生み出さない。もちろん、エコシステム全体を考えれば、ここで多少コストがかかってもトータルで利益が生み出されるわけだが、今後どこかの会社に売却されたりすると、この方針そのものがいきなり変更になりかねない。そういう意味でも、Arm自身の将来がもう少し安定しないと、ちょっと手を出すのが難しいといったところだろう。
あと、Arm以外のプラットフォームをサポートしないというのも、一応ネガティブ要素ではある。ただCMSIS-RTOSをベースにしている時点で、他のアーキテクチャへの移植は難しそうではあるのだが。
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