英ARMは2014年10月1〜3日の3日間、同社の取り組みを紹介するカンファレンス「ARM TechCon 2014」を開催した。内容は多岐に渡るが、ここでは「mbed OS」「TSMCとの10nmプロセス協業」などのトピックを紹介したい。
2014年10月1〜3日の3日間、英ARMは米サンタクララのSanta Clara Convention Centerにて同社の取り組みを紹介するカンファレンス「ARM TechCon 2014」を開催した。ここで公開された内容は多岐に渡るが、この前編では基調講演の中から3点ほどトピックをご紹介したい。
ARMはCEOが現在のSimon Segars氏に変わってから、より一層「IoT(Internet of Things)」の分野に舵を切り始めたが、IoTというのはエンドデバイスからサーバまで非常に広範にまたがるシステムでもある(Photo01)。そのシステムの全要素に向けてARMはソリューションを展開しているが、ここで問題なのはエンドデバイス向けの共通インフラがないことだ(Photo02)。
サーバやネットワークについては既存インフラがあり、ARMはそこへ参入するべく環境を整えているさなかである。スマートフォンは言うまでも無くARMアーキテクチャを中心に既にインフラがある。問題はその先の「30billion IoT Devices」をどうつなぐかで、ここに関するインフラは現在、存在していないのだ。
このマーケットに向けてARMは、「mbed OS」と「mbed Device Server」という2つのプラットフォームの提供を発表した(Photo03)(Photo04)。
これはどういうものかというと、既存のmbedプラットフォーム上で動くOSをARMより無償提供し、これをベースにエンドデバイスを構築するというものだ。このエンドデバイスで何が提供されるか、というのがPhoto05である。
ご存じの通り、既存のmbedはネットワークスタックなどを標準では一切搭載しない。mbed OSではさまざまなネットワークスタックと、簡単なデバイスサポートが提供される予定で、これによりIoTのエンドデバイスに必要とされるネットワーク接続性を簡単に実現できることになる。
ただ、mbed(に利用されるマイコン)は大容量のメモリやフラッシュを搭載していない。例えばmbedの元祖とも言うべき、NXP Semiconductorsの「LPC1768」はSRAM 32KB/Flash 512KBであり、ローエンドにあたるNXP「LPC11U24」ではSRAM 8KB/Flash 32KBであるから、OSといっても、この環境で動く程度の大きさになる。
Photo05についても、当然この中で必要なものを選択して利用する形になるだろうし、そもそもOSといってもRTOSの核になる部分はハードウェア抽象化レイヤーである「CMSIS」に集約されているので、あれこれ機能を盛り込む必要もないだろう。
一方、mbed Device Server(Photo06)は、このmbedベースのエンドデバイスとサーバの間に入る形になる。これはアプリケーションによって変わってくる部分であるが、全てのエンドデバイスを直接、サーバに接続するのは必ずしも得策ではない場合もあり、こうした際に仲介に入るのがこのmbed Device Serverとなる。
mbed OSは無料、mbed Device Serverは有料(ただし開発用は無料)とされ、来年あたりから提供が始まる予定になっているが、これらについての詳しい説明は別記事としたい。
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