日本弁理士会はオンライン記者説明会を開催し、2020年4月1日に施行された意匠法の改正ポイントと新たな保護対象の出願件数、そして来年(2021年4月1日)施行予定の改正内容などについて解説した。
日本弁理士会は2020年9月1日、オンライン記者説明会を開催し、2020年4月1日に施行された意匠法の改正ポイントと新たな保護対象の出願件数、そして来年(2021年4月1日)施行予定の改正内容などについて解説した。
デジタル技術の発展による近年の産業構造の変化、技術力のみで製品/サービスなどの差別化が難しくなりつつある現状。さらには、単なるモノ売りではなく顧客体験の質まで問われるようになってきた時代背景から、デザインの力にあらためて着目し、“大改正”が行われた意匠法。2020年4月1日には、
※注1:模倣品対策の強化の一環として、間接侵害規定を拡充した。意匠法38条1号にある「のみ品」(専用品)に加え、同条2号が新設され、視覚を通じた美観の創出に不可欠なことを知っていた場合も間接侵害に該当することになった。例えば、模倣品を構成部品に分割して製造、輸入するなどの行為も間接侵害の対象となる。
が施行され、新たな法制度としてスタートした(各項目の詳細については、以下の関連記事を参照のこと)。
中でも大きな改正となったのが、画像と空間デザイン(建築物、内装)の保護に関する内容で、日本弁理士会 意匠委員会委員長の大塚啓生氏は「画像や空間デザインに注力する企業やクリエイターにとって大きな前進となる改正だ。物品を離れた意匠権の確立は革命的といえる。今後、広範囲の企業が画像、空間デザインの保護に取り組む可能性がある」と説明する。
実際、今回の意匠法改正により新たに保護対象となった、画像、建築物、内装に関する意匠登録出願件数について、2020年7月1日時点で取得可能なものをピックアップしてみると、画像が239件、建築物が133件、内装が98件あり、「この先、(意匠法改正の)認知が広がればさらに件数は伸びるだろう」(大塚氏)と、今後の利用拡大を見込む。
また、2021年4月1日施行の改正ポイントとして、
が予定されているという。
この中で利用者に与える影響が大きいものとして、手続き救済既定の拡充が挙げられる。「これまで、意匠出願に関する拒絶理由通知を受けた場合、意見書を提出するための期間が設けられていたが、それを徒過してしまう(何も対応しないままにしておく)と救済されるすべがなかった。これが改正され、2021年4月1日以降は意見書の提出期間を徒過した場合でも救済されるようになる」(大塚氏)。
このように大きな改正となった意匠法だが、画像や空間デザインといった従来の物品の枠にとらわれない意匠の保護が可能になったことで、デザインの位置付けが今後ますます重要となってくる。大塚氏は「今回の大改正により、意匠法は今の市場、産業で非常に有効活用できる制度になった。中でも画像、空間デザインの保護は画期的といえる。これから先、“意匠を制する者が知財を制す”。そんな時代が来るかもしれない」と期待を述べる。
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