ただ、そうはいっても何かモノを作る場合は、当然「コスト(費用)」を考えなくてはなりません。「気が付いたら既製品を買った方が安かった……」というのはDIYあるある話です。では、コストを抑えるにはどうすればよいのでしょうか?
実はその方法はとてもシンプルで、作りたいモノが決まったらまずは予算を立てて、その後、実際にかかる費用を見積もるのです。
予算を立てるには、金額の目安が必要です。手っ取り早いのは“市販品のリサーチ”です。例えば、A4サイズの種類などを縦に納められる3段の本棚を作りたい場合、ホームセンターなどで売っている3段のカラーボックスの価格帯が1700〜2000円程度なので、その範囲内で作るか、あるいは少し頑張って上限4000円で作るか、といった具合に判断します。
次に見積もりです。まず、作品のサイズと部品構成を考えて描き出します。このとき、「市販のカラーボックスのように板だけで本棚を作るか、あるいは左右側面の板の代わりに2本の支柱を立てるか……」「支柱も木材にすべきか、金属パイプにすべきか……」などと、いろいろなアイデアが浮かんでくるはずです。これがいわゆる「構想設計」という作業です。
実際に、デザインを描き出して、部品のサイズと材料のめどを付けたら、材料費のリサーチです。今はわざわざ店頭に出向かなくても、大半のことはネットで調べられますし、そこから購入もできます。例えば、木材ならストーリオ、アクリル素材ならはざいや(菅原工芸)といった専門業者の他、大手通販サイトやホームセンターのWebサイトなどでも価格を調べることができます。
そして、この見積もり結果次第で、当初のアイデア通りのモノが作れそうか、あるいは予算がオーバーしてしまいそうかが見えてきます。もし、予算オーバーであれば、予算内に収まるようにデザインを再検討しなければなりません。
ただ、DIYの魅力は、「自分の手で、唯一無二の作品を作り上げること」です。予算オーバーでも当初のデザインで作りたいのが正直なところ……。そんなとき、どうしたらよいのでしょうか。
結論は、「作ればいいんです!」
結局のところ、DIYは自己責任と自己完結の世界です。製造業の世界ではそうはいきませんが、予算オーバーだろうと何だろうと、(おサイフの問題はあるにせよ)自分が納得しさえすればよいのです。個人のモノづくりであれば、誰かに迷惑を掛けることもありませんからね。
さて次回は、実際に作りたいモノを「設計」に落とし込んでいくプロセス、構想設計のアプローチについて取り上げたいと思います。お楽しみに! (次回に続く)
藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンター加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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