リンクスはAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェア「Navitrol」について解説するセミナーを東京都内で開催した。Navitrolはフィンランドのソフト開発メーカーNavitec Systemsが開発した製品で、ナチュラルフューチャーナビゲーション(NFN)技術などによりAGVの高精度自己位置推定を実現し、事前に指定した経路との誤差1cm以内での自律走行を実現する。
技術商社のリンクスは2020年7月2日、同社が同年3月から取り扱いを開始したAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェア「Navitrol」について解説するセミナーを東京都内で開催した。Navitrolはフィンランドのソフト開発メーカーNavitec Systemsが開発した製品で、ナチュラルフューチャーナビゲーション(NFN)技術などの搭載によってAGVの高精度自己位置推定を実現。事前に指定した経路との誤差1cm以内での自律走行を可能にする。
従来、AGVが安定した自律走行を行うには、走行する区域内に「磁気テープ」「QRコード」「反射板」などの誘導体を事前に敷設しておく必要があった。AGVはこれらの誘導体から得る情報を手掛かりに、走行ルートを認識する他、自己位置の推定や、場合によっては障害物の回避などのアクションを実行する。ただ誘導体は一度敷設してしまうと、製造工程の変更や物流倉庫内の棚のレイアウト変更などに合わせて柔軟に位置を変えることは難しい。このため、AGVの経路変更はユーザーが容易に行えなかった。
そこで近年注目を集めているのがNFN技術だ。AGVに搭載したLiDAR(Light Detection and Ranging)で取得した周囲の点群データを基に、2次元環境地図のリアルタイム生成と地図上での自己位置推定を同時に行う。この技術をベースにNavitec Systemsが開発したのがNavitrolである。
Navitrolの特徴は「世界No.1」(リンクス)という高い自己位置推定精度にある。これにより、誘導体を用いずともAGVを誤差1cm程度と高精度で走行、停止することが可能となった。Navitec SystemsがNavitrolとともに開発したAGVのフリートコントロール用ソフトウェア「Navithor」であらかじめAGVの走行経路を指定すると、その経路を正確になぞる形で自動走行する。また、走行区域の壁面が20%程度しか見えていない状況でも正確な自己位置推定が可能だ。例えば、倉庫内で棚や荷物によって壁面が見えない状況でも、自機の位置を見失うことなく走行できる。
リンクス 代表取締役 村上慶氏は「NFNは技術的には2次元SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術と同内容で、これ自体はNavitec Systemsの独自技術というわけではない。ただNavitrolにはNFN技術と共にNavitec Systemsが開発した独自のアルゴリズムも搭載されており、これが高精度な自律走行を実現可能した」と説明する。なお、Navitec Systemsはアルゴリズムの詳細を明かしていないが、村上氏は「点群データからどの情報を自機にとって意味のあるものとして選択する際に重要な、関心領域(RoI)の処理方法などに工夫があるのだろう」と推察する。
また、NavitrolとNavithorを併用することで、AGVのナビゲーションソリューション構築の期間を短縮できる。「誘導体の有無など走行方式の種別にかかわらず、現状のAGVシステムはほとんどブラックボックス化している。エンドユーザーである製造業者や物流業者がAGVの経路変更を行うには、都度AGVメーカーなどに変更開発を依頼しなければならない。これがAGVの運用がコスト高になる原因だ。一方、Navithorを使えば、エンドユーザーでもGUIを用いた直感的な経路作成などが行える。コスト削減につながると同時に、AGVソリューション構築期間も大幅に短縮できる」(村上氏)。
今後国内でAGVなどを活用した作業の自動化がどのように進むかについて、村上氏は「当社の調査ではAGV/AGF(無人搬送フォークリフト)のエンドユーザーのうち、欧州の企業は50%程度がQRコードや反射板、NFNなどの技術を用いているのに対して、日本では最も古い磁気テープの採用率が90%を占めており、新技術の採用という点で遅れているのが現状だ。今後は物流業界を中心に新技術の導入機運が高まるのではないかと予測している」と語った。
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