産業用IoT(IIoT)の活用が広がりを見せているが、日本の産業界ではそれほどうまく生かしきれていない企業も多い。IIoT活用を上手に行うためには何が課題となり、どういうことが必要になるのか。本稿ではIIoT活用の課題と成果を出すポイントを紹介する。第2回では、IIoTソフトウェアプラットフォームの役割を果たすSCADAの特徴について紹介する。
IIoT(産業用IoT)活用を上手に行うためには何が課題となり、どういうことが必要になるのか。IIoT活用の課題と成果を出すポイントを紹介する本連載だが、第2回では、IIoTソフトウェアプラットフォームの役割を果たすSCADAの特徴について紹介する。
既に第1回でも述べた通り、日本の製造業ではSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)システムの導入が極端に少ないという課題がある。SCADAシステムを全く導入していないか、MES(Manufacturing Execution System)とPLC(Programmable Logic Controller)を直接接続する製造ラインを国内ではよく目にする。
国内の生産技術部の方々と会話をしていても、SCADAに対する認識が極めて低いことに驚く。SCADAという言葉を聞いたことのない人もいれば、「SCADA=表示系」という認識をいまだにしている人も多い。実はSCADAは8年ほど前から「SCADA=IIoTソフトウェアプラットフォーム」へと位置付けを大きく変えようとしているのだが、そういう認識は日本ではほぼないといえるだろう。
SCADAの歴史は長く、30年以上前から工場内の全体を見渡す「表示器」として製造ラインのさまざまなデータを集約して表示してきた。その頃のSCADAは、異なるメーカーのPLCを接続し、データスループットを向上させ、表示器の見栄えと表示速度を高め、データの前処理(クレンジング)を行い、レポート生成を容易にする、といった範囲の役割を担っていた。
しかし、8年ほど前からSCADAはIIoTソフトウェアプラットフォームとしての明確な役割を担うようになってきている。これらの表示機のような機能に加えて、タブレット表示(HTML5対応)、アラーム解析、レシピ管理、バッチプロセス制御、監査証跡(履歴管理)、データインテグリティといった機能が追加されてきている。
これらのIIoTソフトウェアプラットフォームとして求められるSCADAの新たな機能群を、具体的な事例を含めて紹介していく。
欧州の工場では自動車の1つの製造ラインに50以上のタブレット端末が設置されているケースも珍しくはない。
エラーが発生した瞬間に「どんなエラーが発生しているか」「誰がそこに向かって復旧すべきか」「復旧のためにどんなツールを持参すべきか」「復旧方法のマニュアル表示」「製造ラインの開発担当者に直接問い合わせるための内線番号の表示」などが一斉に表示される。工場内に設置されていたり、各作業員が保有しているタブレット端末を通じて表示されたりして、50人の作業員全員に必要な情報が同時に知らせることができるようになるのだ。
復旧した際にも、単に復旧させるのではなく「誰がいつどのように復旧させたのか」といった情報が自動的にログとして記録される。この情報は後に同じエラーが発生した際には根本解決に向けた改善への判断材料に用いられたり、原因の解析に利用されたりすることになる。
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