技術商社のリンクスは2019年11月22日、東京都内で開催したユーザーイベント「LINXDays 2019」に合わせて記者会見を開き、同社 社長の村上慶氏が事業戦略について説明。今求められているロボットは「アーティフィシャルワーカー」とし、必要な要素として「ピッキング」「移動」「判断」の3つを挙げた。
技術商社のリンクスは2019年11月22日、東京都内で開催したユーザーイベント「LINXDays 2019」に合わせて記者会見を開き、同社 社長の村上慶氏が事業戦略について説明した。
村上氏は製造業などでも注目を集めているIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)について「確かに話題になっているが、現実解といえるものは見えていなかったのではないか。ここにきてやっと見えてきたと感じている」と語る。その背景として、民生向けに実用化された技術が、数年越しで産業向けに展開されるトレンドがある。例えば、1990年代のPC技術が産業機器向けのマシンビジョンを生み出し、民生機器で利用が始まったイーサネットが産業用のギガビットイーサネットで生かされるようになった。IoTやAIも、民生向けで積み上げた技術や知見が産業向けに展開されるタイミングを迎えたというわけだ。
IoTやAIの関連で村上氏が期待しているのが産業用ロボット市場だ。「今までの産業用ロボットは目もなく知性もなかった。現時点でも数千台に1台付いているかどうかだ。今後は必ず目と知性が必要になる」(同氏)とし、リンクスとして事業参入を強化し続けている。
リンクスが実現を目指すロボットは「アーティフィシャルワーカー」だ。村上氏は「人造人間、人工社員とも言い換えられる。今求められているのはまさに人工社員であり、これは5〜10年後には実現できるのではないか」と強調する。
このアーティフィシャルワーカーに必要な具体的な要素として挙げたのが「ピッキング」「移動」「判断」の3つだ。「ピッキングロボットの需要は2年後にピークが来るだろう。だが必要なのは、ピッキングだけでなく、ピッキングして移動し、検品のための判断をすぐに行えることだ」(村上氏)という。
リンクスでは、ピッキングについてはPhotoneoの「Bin Picking Studio」、判断についてはMVTec Softwareの「HALCON」などでカバーしている。特に、Bin Picking Studioについては「自動車メーカーでの実運用が2020年春から始まる段階」(同氏)になる。そして、残る移動をカバーするために販売を決めたのがフィンランドNavitec Systemsが開発するAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェア「Navitrol」だ。村上氏は「自動車業界では工程間搬送にAGVを用いているが、非自動車業界にも広がりつつある」と強調する。
ロボット関連以外では、オーストリアCOPA-DATAのSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)「zenon」が、トヨタ自動車に採用されたことを明らかにした。生産ラインにかかわるさまざまな情報を表示できるタブレット端末、1ラインにつき50〜100台を展開したいという要望がある中で、「国内外13社のSCADAと比較した上で、当社が国内でサポートするzenonを選定した」(村上氏)という。
また、市場拡大が急ピッチで進む3次元検査についても、アイシン精機の溶接検査用途でHALCONが採用された。これまで行ってきた目視検査からの置き換えで、2019年8月から生産ラインへの導入が始まっている。このほか、カナダLMI Technologiesの3次元検査ソリューション「Gocator」が、トヨタ自動車の車台番号打刻検査の自動化で採用された。
リンクスでは、HALCONなどの「画像処理」、zenonなどの「IIoT(産業用IoT)」、そして「ロボット」という工場内での採用実績を、工場の外に展開したいと考えている。これら3つの分野に、小売りや農業、物流など向けの「サービスロボット」、組み込みカメラモジュールとしての販売を計画している「エンベデッドビジョン」の2分野を加えて、合計5分野で展開を進めて行く方針である。
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