連載
» 2020年06月02日 08時00分 公開

知財は事業戦略の構築段階から検討せよ、新製品投入時のリスク確認も不可欠弁護士が解説!知財戦略のイロハ(2)(3/3 ページ)

[山本飛翔MONOist]
前のページへ 1|2|3       

製品名の決定

 (3)の製品名については、できる限り商標として強いものを選択することをおすすめします。「強い商標」か否かは、他の製品名と比較した際の、その商標の識別力を1つの指標として判断できます。識別力の高い商標の選定時には、以下の表1の基準が参考になります(一般的に識別力が強いとされる順番で紹介します)。できれば、第三者に商標権を取得されていない名称であることを前提に、(a)または(b)の基準にかなう製品名を選定したいところです。

商標の選定基準
(a)造語など、独創的な商標 SONY
(b)使用する商品・サービスと関係のない一般用語を使用する Apple、PCやスマートフォンなどへの使用
(c)使用する商品・サービスの性質との間に間接的に関連性がある場合 Microsoft
(d)使用する商品・サービスとの間に直接的な関連性がある場合 清酒に「吟醸」
(e)使用する商品・サービスにとって一般名称である又は事後的に一般名称化したもの エレベーター
表1 商標の選定基準の例

 また、商標権として登録されるためには、上記の識別力のみならず、他者の商標との混同などが生じないことも必要となります(商標法4条1項各号参照)。そのため、自社が採用しようとしている商標が、他社により商標登録をなされているか否かを調査する必要がありますが、大まかな調査であれば、特許庁のデータベースであるJ-PlatPatを用いて以下の囲み記事の手順で確認できます(なお出願から当該商標出願が公開されるまでは、当該出願はJ-PlatPatでも確認できないため、注意が必要です)。

J-PlatPatによる商標登録調査の流れ

(1)J-PlatPatの商標のタブの「商標検索」にアクセスし、検討している商標の読み方を片仮名で入力し、称呼が同じものや似たものがあるか否かを確認する。

J-PlatPatの「商品検索」ページ[クリックして拡大]出典:知財金融委員会 J-PlatPatの「商品検索」ページ[クリックして拡大]出典:知財金融委員会

(2)同じ、または似た称呼の商標が出てきた場合には、「商品及び役務の区分」ならびに「指定商品又は指定役務」を確認し、自社が行おうとしている事業と重複しているか否かを確認する。

類似する商標の商品/労務区分を確認する[クリックして拡大]出典:知財金融委員会 類似する商標の商品/労務区分を確認する[クリックして拡大]出典:知財金融委員会

 使用する商標が決まり、商標出願を行う場合、出願対象となる商標のみならず、その商標を使用する商品/サービスのカテゴリーを決める必要があります(指定商品/指定役務)。この指定商品/指定役務の選択の際には、次の2点に注意する必要があります。

 まず、新しい事業領域に挑戦する場合、当該事業にかかる商品/役務が既存のカテゴリーにそのままあてはまらない場合があります。この場合は、弁理士や弁護士などと相談しつつ、適切なワーディングで慎重に指定商品や指定役務を検討する必要があります。また、既に商標出願または商標登録している会社名や製品名を使用する場合であっても、当該商標権の指定商品や指定役務で新規製品のカテゴリーがカバーされているか確認する必要があり、カバーされていなければ追加で商標出願を行う必要があります。

 なお製品名を複数展開する場合、特定の1つの商標を起点にシリーズ展開していく(例えば、AppleのiPad AirやiPad Proなど)、それぞれに全く違う商標を使用するなどの手法がありますが、多くの商標権を登録しなければならない上、第三者の商標権侵害の有無の調査(クリアランス)も行う必要が出てきます。新製品に割ける予算が多くない場合には、前者の方法をとることも戦略的には望ましい場合も多いでしょう。

 またロゴを採用する場合、「ロゴ作成にあたっての権利処理」「第三者の権利侵害の回避」「自社の商標権の取得」のそれぞれが問題となります。

 「ロゴ作成にあたっての権利処理」については、外部の第三者に作成を依頼する場合、当該第三者からロゴに関する著作権などの権利の譲渡を受けることが必要となります。また、商標は先願主義であるため、当該第三者が自社よりも先に商標出願を行わないよう、第三者との間で合意を結んでおくべきです。

 同時に「第三者の権利侵害の回避」では、ロゴが第三者の権利を侵害しないよう留意する必要もあります。特に第三者に制作を委託する場合、制作過程が見えないため、既存の作品を模倣するなどして第三者の権利を侵害するものなのかどうかの判別が難しいです。そのため、制作を委託した第三者に対し、当該ロゴが第三者の権利を侵害したものでないことの表明保証は求めておくべきでしょう。その場合でも、納品されたロゴを用いて画像検索*7)などを行い、明らかに類似するものがないか否かは確認しておくことが望ましいでしょう。

 その上で、「自社の商標権の取得」ではロゴについても、少なくともよく使用するものについては、商標出願しておくことが望ましいです。

*7)例えばGoogle画像検索の利用など。

小括

 今回は、主に知財面から事業戦略を構築する際の留意点をご紹介してきました。次回は、構築された事業戦略を実行していくにあたっての留意点を主に知財面からご紹介していこうと思います。

筆者プロフィール

山本 飛翔(やまもと つばさ)

2014年3月 東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了
2014年9月 司法試験合格(司法修習68期)
2016年1月 中村合同特許法律事務所入所
2018年8月 一般社団法人日本ストリートサッカー協会理事
2019年〜  特許庁・経済産業省「オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドラインに関する調査研究」WG・事務局
2019年〜  神奈川県アクセラレーションプログラム「KSAP」メンター
2020年2月 東京都アクセラレーションプログラム「NEXs Tokyo」知財戦略講師
2020年3月 「スタートアップの知財戦略」出版(単著)
2020年3月 特許庁主催「第1回IP BASE AWARD」知財専門家部門奨励賞受賞


TwitterFacebook

スタートアップの皆さまは拙著『スタートアップの知財戦略』もぜひご参考にしてみてください。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.