産業技術総合研究所は、実際の臓器と似た構造の血管を持った人工組織を作る技術を開発した。血管に培養液を流すことで、酸素や栄養を供給して組織を維持したり、薬剤を流し入れたりできる。
産業技術総合研究所は2020年4月14日、実際の臓器と似た構造の血管を持った人工組織を作る技術を開発したと発表した。血管に培養液を流すことで、酸素や栄養を供給して組織を維持したり、薬剤を流し入れたりできる。
今回開発した人工組織は、同研究所が開発した細胞培養デバイスを使用。臓器の機能を担う実質細胞、血管の元になる血管内皮細胞、血管形成を助ける間葉系幹細胞と、コラーゲンを混ぜて、あらかじめニードルを埋め込んだ培養デバイスで3次元組織を作製した。
その後、ニードルを取り除いてできた空間に血管内皮細胞を流し込み、主血管とした。次に、培養デバイスに培養液を流しながら培養すると、主血管周辺の血管内皮細胞の活動が促進し、枝分かれした毛細血管を作れた。作成した3次元組織は、培養液を流しながら1週間程度維持することが可能だ。
今回の研究では、実質細胞として肝臓由来の細胞を使用。人工組織の中で、肝臓の機能を示すタンパク質の発現や薬剤代謝が観察された。培養デバイスの形や大きさ、材料となる細胞の種類を変えることで、膵臓や脳などのさまざまな臓器の一部を模した組織や膵がん、脳腫瘍なども作れるため、創薬や再生医療分野への貢献が期待される。
研究グループは今後、iPS細胞を含めさまざまな種類の細胞を用いて、より大きな組織や臓器を作製し、薬剤評価や大量生産、高機能化を進める予定だ。
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