ランチセッションでは、産業機器間を結ぶインタフェース規格として注目を集める「OPC UA」について、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長である岡実氏が「OPC UAが注目されているのはなぜか?〜その背景と最新動向〜」と題して講演を行った。
「OPC UA」は、産業用アプリケーションの相互運用に必要な情報交換を実現するアーキテクチャ技術仕様である。OPC Foundationが規格策定や運用を進めており、オープンかつプラットフォーム非依存の高い相互運用性を特徴としている(※)。OPC Foundationには2019年12月で737社が参加しているが「1年間で100社以上増えた」(岡氏)。これらの普及活動や規格運用を日本で行っているのが日本OPC協議会である。
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「OPC UA」そのものは2008年に策定された規格で新しいものではない。しかし、大きな注目を集めるようになったのは、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨通信規格とされたからである。岡氏は「OPC UAは、産業用IoTを支える技術の1つである。特に『RAMI4.0』が登場した、インダストリー4.0の実践戦略が発表され、その中で紹介されたことから関心が高まった。欧米だけではなくアジアでも対応は進んでいる。中国でも標準規格(GB規格)として登録されており、積極的に活用する動きが広がっている」と岡氏は普及状況について語る。
特にOPC UAは、さまざまな規格同士を結び、データ連携を行えるようにする相互運用性が高く評価されている。2019年4月には、OPC FoundationとVDMA(ドイツ機械工業連盟)がドイツでこれらの業界団体との連携をテーマとした「1st World Interoperability Conference」を開催している。これは、35の業界団体がOPC UAとのコラボレーションだけをテーマにしたイベントで講演には350人を超える参加者が集まったという。
岡氏は「業界団体や企業が持つさまざまな標準規格を、OPC UAにより結んでいく取り組みを強化している。現在50以上の団体とコラボレーションしており、共同で相互運用性の確立に取り組んでいる。『OPC UAはオートメーションの国連』のような存在を目指す」と語っている。
さまざまな規格が存在する中で「OPC UA」が相互運用性を確保できる理由には、コンテクストや情報モデルを定義し伝える仕組みを持てるという点がある。OPC UAが受け入れられた要因について岡氏は「データの活用は業界や使われる環境などによって大きく変わる。そのコンテクストを盛り込めるような枠組みを『コンパニオン情報モデル』として用意したことや、インタフェース部分を切り分けたことでシステム構築が容易である点、セキュリティ面での対応が設計段階から織り込まれた規格である点が評価を受けている」と述べている。
これらの特徴を生かし、コンパニオンスペックを活用してコラボレーションを実現しているのが、PLCの国際標準規格である「PLCopen」や、射出成形機の「EUROMAP」、工作機械の「umati」などである。また、業務用厨房機器の情報モデルを策定した「HKI」とのコラボレーションも行っている。
国内でもOPC UAを採用した大規模な事例も生まれつつある。例えば、出光興産は、製油所や事業所で構成される大規模生産システムの通信方式として「OPC UA」を採用したことを発表している(※)。その他にもグローバル展開する電子部品メーカーや医療機器メーカーなどいくつかの事例が生まれてきているという。岡氏は「国内でも大規模な事例が増えてきた。導入による成果も増えつつある」と語っている。
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OPC Foundationでは、今後はさらにOPC UAの適用領域を拡大し、産業用機器のシームレスな情報連携を広げていく方針である。その意味で大きな注目を集めている取り組みの1つが「Field Level Communications(フィールドレベルコミュニケーション、FLC)」である。「FLC」はコントローラー間やコントローラーとフィールド機器間の情報連携を実現するもので、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保するTSN(Time Sensitive Networking)技術がベースとなっている。
工場のフィールドネットワークにはさまざまな規格が乱立している状況が生まれており、データ連携を行いにくい環境があるが、FLCを活用することで、複数のネットワークの間をシームレスにつなぐことができるようになる。岡氏は「FLCを推進するイニシアティブがOPC Foundation内で2018年11月からスタートしている。IEEEなどとも連携し、技術の確立や普及に取り組んでいる」と語っている。
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