大みか事業所で製造されているものは、鉄道システムや鉄鋼の製造システムなどだ。その他、発電用制御システムなども制御機器から一連のシステムまで、開発や製造、システム構築や運用保守などが行われている。基本的には一品ごとのカスタマイズが入る製品で、顧客との継続的な関係性の中から製品やシステムの価値を高めていくというものである。
大みか事業所は、これらのように、作るモノがもともと「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の形となっていたことに加え、日立製作所の持つ「IT×OT×プロダクト」の強みを体現するものだった。そのため、日立製作所が展開するIoT基盤「Lumada」の展開のカギを握る中核拠点として位置付けられきた。「CPSの知見や価値を創出するため、さまざまな形で『Lumada』の社会実装を進めてきた。協創のノウハウや成果は大みか事業所内でもさまざまな形で活用されている」と花見氏は述べる。
では、「世界で最も先進的な」工場として認められた製造現場では、どういう取り組みを行っているのだろうか。
大みか事業所が目指しているのは、製造工程全体でIoT(モノのインターネット)を活用してフィジカル情報をデータ化し、そのデータを活用することで、設計から開発、製品化まで個々の顧客ニーズに効率的に対応するという姿だ。さらに、品質保証においては設計段階から一元的なデータで、製品の信頼性を確保する一貫開発体制の構築を目指す。
ハードウェアの設計と製造においては、日立製作所では6段階の生産システムの成熟度モデルを定義している。レベル1を「見える」、レベル2を「つなげる」、レベル3を「流れを制御する」、レベル4を「問題を把握、対策する」、レベル5を「将来を予見する」、レベル6を「連携と協調」と位置付けており、それぞれの工程や製造品目のレベルを高めていく取り組みを進めている。
現状では大みか事業所の成熟度モデルは「作るモノによってレベル3と4の間を行き来している状況だと考えている。3年単位で1つずつ上げていく。3年以内にレベル5まで引き上げたい」と花見氏は語っており、デジタル技術を活用することでさらに高度化を進めていく。
大みか事業所でのこれらの取り組みは、スマート工場化の流れが出てから始めたものではなく、約20年にも及ぶ生産革新への取り組みを進めながら、デジタル技術をうまく取り込んできたことが特徴だ。その中で大きな成果を生み出したのが、制御盤および制御システムの組み立て工程である。
先述した通り、大みか事業所で製造する制御機器やシステムは基本的には全てが異なる製品で、カスタマイズが必須の受注生産となる。同じものを大量に作るわけではないため、製造ラインを組んで自動化することが難しく、人手による柔軟性に頼らざるを得ない状況であった。
そこで、大みか事業所では、この人手による制御盤の製造工程を改善するために主に以下の3つの取り組みを進めた。
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