和田氏 ガンやケーブルはまだ試作品とのことであるが、正式な発表はいつ行うのか。
吉田氏 CHAdeMO3.0としての発表会を2020年4月1日に予定している。当日はChaoJiタイプの超急速充電器や車体側のインレット、さらには近年、二輪車のCHAdeMO仕様も検討していることから、これらを合わせてCHAdeMOのフルライン化として公表したい。
和田氏 今回のChaoJi急速充電器の価格はどれくらいを想定しているのか。
吉田氏 現在各社が開発中であり、まだ詳細をいえる段階ではない。しかし、ChaoJiは液冷を採用しており、ラジエーターが必要であること、さらに出力が大きいことからキュービクル(高圧受電設備)が必要となるので、かなり高くなることが予想される。なお、これらフル装備のものと、そこまで必要ないタイプなど、分けて考えることも必要と考えている。
和田氏 今後の課題や対応について教えて欲しい。
吉田氏 まずはCHAdeMO3.0の仕様書を2020年内に仕上げることにある。その後、中国など各国とChaoJi普及シナリオを協議していきたい。またIEC(国際電気標準会議)にも、ChaoJiを日中共同で提案していきたい。
このように、日中共同でChaoJi急速充電方式を開発しているわけだが、私が感じたことが2つある。1つは、中国はこのChaoJi急速充電開発に対して、とてもまじめに取り組んでいることである。つまり中国側は、EVなどの新エネルギー車を将来どのようにして成長させるべきか、インフラも含めて真剣に考えている。
もう1つは、中国の影響力の大きさである。中国が参加することになると、欧米のCCS陣営やテスラなども参加してくる。世界最大の自動車市場であり、かつ新エネ車市場でもあることから、どの陣営も注目せざるを得ないのではないだろうか。
ChaoJiの試作品を見て正直驚いた。現在の50kW用急速充電器は、ガンが大きく重いという指摘もあり、これが900kWとなると、とても人間が扱うレベルではないのではと思っていた。しかし、今回の試作品では、むしろ従来より小型軽量化が図られている。心から関係者の努力に敬意を表したい。
また過去よりいきさつのあった欧米のCCS陣営、さらにはテスラとも国際会議版として協議をしているとのこと。欧米でも大容量の電池を搭載する車両や、電動バス、トラックの需要がある。今回の仕様は、彼らにも十分受け入れる素地を持っており、世界統一規格として近づいているように思われる。
電動車両と充電インフラは普及のための両輪であり、このように充電インフラの規格が統一に近づくと、普及に向けて一段と弾みがつくのではないだろうか。まだまだ紆余(うよ)曲折あるかもしれないが、ビッグピクチャーを描きながら、取り組んでいただくことを願うばかりである。
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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