人作業をロボットとITで徹底支援、正味作業時間83%減を実現したOKI富岡工場スマート工場最前線(1/5 ページ)

多品種少量生産と自動化をどう両立させるのか――。国内に工場を構える多くの製造業にとって大きなテーマである。特に多品種少量生産を実現する人作業の効率化については、人手不足も重なり喫緊の課題となっている。こうした中で独自のシステム開発などにより低コストで次々と人作業を支援するシステムを現場に導入し効果を生み出す工場がある。OKIの富岡工場である。同工場の人作業支援への取り組みを紹介する。

» 2019年09月17日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 世界中でモノが不足し同じものを大量に普及させることが求められていた少品種大量生産の時代とは異なり、ニーズが多様化する中で多くの製造業が多品種少量生産化を迫られている。多品種少量生産では頻繁に製造物を切り替える必要がある他、一ロット当たりの数も小さくなり、自動化設備の導入効果が得られにくい状況がある。こうした中で、多くの製造業では「人手による柔軟性」を生かした生産ラインが構築されている。

 しかし、人手不足が進む中で、これらの人手を生かした柔軟な生産方式にもさらなる効率化や自動化が求められている。こうした中でITや協働ロボットなどを使った独自の生産システムの開発により人作業の負担を軽減するシステムを次々に導入しているのが沖電気工業(OKI) メカトロシステム工場(富岡工場)である。

 多品種少量生産を支援する設備導入は一つ一つのシステムに費用をかけられないため投資規模が限定されるという状況があるが、OKI 富岡工場では汎用品や3Dプリンタなどを駆使し、独自のシステムを工場内で開発することで、低コストで高い効果を生み出すシステムを導入できていることが特徴だ。OKI 富岡工場の多品種少量生産における効率化の軌跡を追う。

photo OKI富岡工場の空撮図(クリックで拡大)出典:OKI

カスタマイズが基本となる富岡工場の生産品

 OKI 富岡工場は、メカトロシステム事業本部の生産機能を担う。富岡工場の歴史は古く、第二次世界大戦後中の1943年に工場疎開令により群馬県富岡市に工場を建設したことが源流となっている。その後1964年に富岡市内で移転を行い、富岡市東部工業団地内の現在地に立地することになった。敷地面積は6万2500m2、建物延べ床面積(生産エリア)が3万8400m2。従業員数は2019年4月1日時点で849人となっている。部品加工や最終組み立て、検査などを行う富岡工場に加え、商品開発や試作などは高崎拠点で行っている。また、海外向けの製品については、中国の沖電気実業で行っているが、部品供給などは富岡から行うなど「3拠点が連携しながらモノづくりを行っている」とOKI メカトロシステム事業本部 メカトロシステム工場 工場長の富澤将一氏は語る。

 メカトロシステム事業本部では、ATM(現金自動預け払い機)などの金融向け自動機や流通向けの現金処理機、旅客交通向けの発券端末などの開発、製造を行っている。これらの製品群は顧客企業ごとにカスタマイズが必須となっていることが特徴である。

 必然的に生産数量も同じものを数十万台作るものではなく、多くても数万台規模の製品を「受注環境に合わせて細く長く作ることを志向した、多品種少量生産に特化した工場となっている。この多品種少量生産において世界ナンバーワンの工場を作り上げることが目標だ」と富澤氏は富岡工場の特徴と目標について説明する。

photo 富岡工場で生産している製品群(クリックで拡大)出典:OKI
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