グーグルがクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の大阪GCPリージョンの正式運用を開始した。同リージョンは、2016年に運用開始した東京に次ぐ、日本国内で2カ所目のクラウド拠点となる。
グーグル(Google)は2019年5月14日、東京都内で会見を開き、クラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の大阪GCPリージョンの正式運用を開始したと発表した。同リージョンは、2016年に運用開始した東京に次ぐ、日本国内で2カ所目のクラウド拠点となる。大阪リージョンの開設により、国内企業がGCPを利用する上でのBCP(事業継続計画)につながる冗長性を確保しやすくなるとともに、関西に本拠を置く企業がGCPを利用する際の遅延時間を6ms改善できるとしている。
大阪GCPリージョンは、3ゾーン、2エッジPOP(Point of Presense、接続拠点)、2専用接続POPの構成。会見に登壇したGoogle Cloud CEOのトマス・キュリアン(Thomas Kurian)氏は「東京GCPリージョンとほぼ同等のサービスを提供できる。日本国内のGCPのキャパシティーは少なくとも倍増したといえる」と語る。また、今後の需要に合わせて東京GCPリージョンの増強も検討しているという。
アジア太平洋地域で7番目となる大阪GCPリージョンの開設により、GCPのクラウド拠点数は世界で20カ所となった。世界全体のエッジPOP数は134となり、これらを自社で敷設した13の海底ケーブルで結んでいる。今後も引き続き、韓国のソウル、インドネシアのジャカルタなどにクラウド拠点を設ける計画を明らかにしている。
大阪GCPリージョンは既に先行ユーザーによる一部利用が行われている。アサヒグループホールディング、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、シャープなどだ。製造業関連では、KCCSがエネルギー関連を中心とするIoT(モノのインターネット)トータルソリューションで、GCPの「App Engine」や「Big Query」を活用しており、東京と大阪の2リージョン体制でさらにサービスを充実させるとしている。またシャープは、デジタル複合機のプリント画質の評価業務にGCPの画像解析エンジンを利用している。同社でデジタル複合機複合機事業を統括する専務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏は「今後は分析したデータを活用し、機械学習によるデジタル複合機のプリント画質向上に役立てていきたい」とコメントを寄せている。
大阪GCPリージョンの開設に合わせて、Google Cloudによる直接販売とともにパートナーエコシステムも強化して行く方針だ。NTT西日本グループのNTTスマートコネクトが新たに加わり、既存パートナーのソフトバンクもディザスタリカバリーなどの用途で提案を強化する方針を打ち出している。
Google Cloud 日本代表の阿部伸一氏は、直近の国内施策について、「AI活用のためのAdvanced Solutions Labは既に数社が利用している。24時間365日のサポート体制では『G Suite』で好評の夜間の日本語サポートをGCPでも提供することになった。関西エリアでのトレーニングプログラムも拡充していく」と述べる。
またキュリアン氏は、日本のユーザーから引き合いの強いGCPのサービスとして、GCPや他社クラウド、オンプレミスのデータセンターをハイブリッド運用できる「Anthos」や、大量のデータの分析を容易に行えるBig Queryなどを挙げた。阿部氏も「シャープの例にあるようにAI(人工知能)や機械学習を使って、製品やサービスを進化させたいと考える企業は多い。エッジ側での高度な機械学習を可能にする『Edge TPU』も複数社による評価を進めている」と述べている。
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