脳からの神経信号が肝臓の再生を促す仕組みを解明医療技術ニュース

東北大学は、肝臓傷害時に、脳からの神経信号が緊急に肝臓再生を促す仕組みを解明した。また、重症肝臓傷害の際に、この仕組みを促すことで、生存率を回復させることに成功した。

» 2019年01月11日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2018年12月14日、肝臓傷害時に、脳からの神経信号が緊急に肝臓再生を促す仕組みを解明したと発表した。また、重症肝臓傷害の際に、この仕組みを促すことで、生存率を回復させることに成功した。同大学大学院医学系研究科 教授の片桐秀樹氏らの研究グループの成果となる。

 研究グループは、マウスの肝臓の70%を切除して、重症の肝臓傷害を起こす実験を実施した。脳からの信号は、自律神経の1つである迷走神経によって肝臓に届き、迷走神経がアセチルコリンを分泌して肝臓内の免疫細胞(マクロファージ)を刺激し、インターロイキン6(IL-6)の分泌を促した。さらに、IL-6が肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化して、肝臓の再生を促進することが分かった。

 この多段階の仕組みは、肝臓内に多く存在するマクロファージを刺激し、神経信号を肝臓全体に効率よく伝達するために重要だと考えられる。さらに、この神経信号がないと重症肝臓傷害時の生存率が低下すること、その状態でIL-6が肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化させると、生存率が回復した。

 今回発見した仕組みを制御すれば、肝臓がん手術の際にがんを含んだ広範囲の肝臓を切除することが可能となる。根治に向けて、切除手術後の合併症が少ない治療法の開発につながることが期待される。

photo 迷走神経が肝臓再生を促進する概念図(クリックで拡大) 出典:東北大学
photo 多段階に波及する肝臓の神経信号 出典:東北大学
photo 神経信号の有無と肝臓傷害の生存率 出典:東北大学

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