ストラタシス・ジャパン(以下、ストラタシス)は「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」(2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)において、実質臓器模型が製作出来る「デジタルモールド・メディカル」を披露した。工業部品の射出成形およびプレス成形用の「デジタルモールド」に長野県内の食品メーカーの素材技術を加えて製作する技術だ。
ストラタシス・ジャパン(以下、ストラタシス)は「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」(2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)において、実質臓器模型が製作出来る「デジタルモールド・メディカル」を披露した。工業部品の射出成形およびプレス成形用の「デジタルモールド」に長野県内の食品メーカーの素材技術を加えて製作する技術だ。
デジタルモールドは長野県の設計会社 スワニーが開発した技術で、3Dプリンタで出力した樹脂製金型を、射出成形で用いることが可能だ。
現在、3Dプリンタで製作した臓器模型を治療の計画に役立てる事例が増えているという。しかし一般的に3Dプリンタの造形費用はいまだ高価で、臓器模型1つの製作に数十万円ものコストがかかる。それが、実際に切開や縫合を行う外科医の手術トレーニングに用いられる実質臓器模型の普及の課題の1つとなっていた。
デジタルモールド・メディカルでは、CTやMRIの撮影データ(DICOMデータ)を基に金型データを作成する。この方式ならば、個別のDICOMデータから症例別の臓器模型を作り、実際の手術前のシミュレーションでの活用も期待できそうだ。ブースにはデジタルモールド・メディカルで成型した肝臓の模型が展示されており、実際に触れることができた。
成形材料には長野県の食品メーカー「伊那食品工業」の持つノウハウを生かした、デジタルモールド専用の「生体組織シミュレーションゲル」を使用し、質感はまさに臓器そのもの。これにより術式検討や、外科手術のトレーニングを実際の手術に限りなく近い感覚で行える。伊那食品工業は寒天ブランドの「かんてんぱぱ」でよく知られている。
通常、軟らかい材料を使った細かな造形は難易度が高いとされるが、同社の最新3Dプリンタとスワニーが持つ部品製作技術により、直径1mm以下の細い血管でも再現できるという。なお、材料は天然由来なので、口に入れても安全で、かつ環境にも配慮されている。
なお、今回は技術展示のみで市販化はこれから検討するということだ。
ストラタシス製3Dプリンタの装置そのものも機能向上している。フルカラー・ポリジェット機「Stratasys J750」は、従来の36万色から50万色にバージョンアップし、より自然な発色をかなえたという。2018年6月19日に発表したばかりの、カーボンファイバー・マテリアルに特化した高精度FDM機「Fortus 380CF」も展示。同製品の本体価格は1000万円を切ったとのことだ。
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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