認知と判断はそれぞれ個別にアルゴリズムを開発する。市街地と一言でいっても国や地域ごとに環境が異なるが、大本のアルゴリズムは共通で開発できるという考えだ。「地域ごとに違いは後から分岐させる。また、ルールベースが不要だという考えではない。ルールベースで走行する方が効率がいい場面もある。最終的には判断の制約としてルールを取り入れる必要があるだろう」(アセントロボティクスの説明員)。
このように、AIの学習で道路を実際に走ることに依存しないのが同社の特色だが、開発したアルゴリズムは最終的に実車で検証する。実験車両も自前で用意しているが、この車両はAIが学習するためのものではない。あくまでアルゴリズムの検証用で、道路環境や例外的なシーンの情報を収集する役割も兼ねる。
同社は2020年かそれよりも早い段階で、市街地の自動運転向けのアルゴリズムの開発を終え、自動車メーカーに採用されることを目指す。その中で、学習環境のATLASと実験車両を活用していく。ただ、車両には、カメラやミリ波レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、温度センサーなどさまざまなセンサーが装着されている。石﨑氏は実験車両について、「高性能なコンピュータと膨大なセンサーで環境を理解している。とにかく全て検知して、そのデータを全部計算処理するのは、量産車として現実的ではない」と捉えている。
今後1〜2年は、より少ないセンサーを基にアルゴリズムの判断を再現し、検証できるかどうかが課題になるという。「脳の働きの便利なところもAIに取り込みたい。例えば人間は、目を向けた方向に聴覚を集中させ、雑音が多くても必要な音を聞き取ることができる。また、運転中のドライバーは常時360度を見ているわけではない。本当に全てを見る必要があるのか、見るべきところはどこかを絞り込んで、演算能力を控えめに抑えても、人間のように運転できるようにしていく」と石﨑氏は述べた。
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