そういった課題意識を基に国産AUTOSAR CP準拠のSPFを開発するために設立されたAPTJは、パートナーとなるソフトウェア企業からの出資と技術者の派遣、共同開発サプライヤーからの共同開発費によって活動を進めてきた。高田氏は、APTJの特徴について「TOPPERSプロジェクトと名古屋大学における開発経験とAUTOSAR CPに関する知見があること、特定の自動車メーカーやサプライヤーの出資を得ていない独立系企業であること、車載制御システムの開発に必要なSPFに対する要望を持ち、最初のユーザーになる共同開発サプライヤーがいること」の3つを挙げた。
今回発表したJulinar SPFの正式販売は、設立から約3年間の「第1フェーズ」(高田氏)の区切りとなる。ヴィッツ、キヤノンITソリューションズ、サニー技研、東海ソフト、富士ソフト、菱電商事という6社のパートナーソフトウェア企業を通して販売する。サポートサービスもこれらの企業が提供し、APTJはそれを支援することになる。
Julinar SPFを構成するAUTOSAR CPのBSW(基盤ソフトウェア)は、AUTOSAR CPのリリース4.2.2をベースに開発。セキュリティやイーサネット関連の一部BSWは、リリース4.3.xに準拠しており、MCAL(マイコン抽象化層)は半導体メーカー製の利用を基準とする。ジェネレータは独自に開発しているが、上流設計ツールとコンフィギュレーションツールは他社製ツール(dSPACEの「SystemDesk」など)を活用する方針だ。
各BSWは、自動車向け機能安全規格のISO 26262で最も高い安全要求レベルであるASIL-Dに対応するように開発を行っている。「現時点では全てASIL-Dを満たしているわけではないが、車載ソフトウェア品質の標準であるAutomotive SPICEのレベル2を満たす開発プロセスを採用している」(高田氏)という。また、Julinar SPFの製品ライセンスでは、ランタイムコードのソースコードも提供し、ソースコードの改変も認めている。
高田氏は「Julinar SPFの発売を迎え、今後APTJは第2フェーズに入る。日本から国際標準技術を発信し、車載組み込みシステム分野で国際的にトップクラス企業に成長させていきたい」と述べている。
なお、会見では、日本自動車研究所(JARI)と協栄産業が開発を進めている自動車セキュリティ評価用オープンプラットフォームシステム「Security Testbed System」にJulinar SPFが採用されたことも発表された。菱電商事とサニー技研の納入事例となる。
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