AUTOSARを「使いこなす」ということを考えてみる(前編)AUTOSARを使いこなす(2)(1/3 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。技術面の解決に取り組むだけではなく、AUTOSARを扱う際に陥りがちな思考から解き放たれることで、AUTOSARともっとうまく付き合っていくことができるかもしれない。

» 2018年04月06日 10時00分 公開
[櫻井剛MONOist]

はじめに

 前回は、AUTOSARの最新動向についてご紹介いたしました。

 そして、その終わりで、「AUTOSARを使いこなす」ということに関する、3つの問いかけをさせていただきました。

  • 問1:「終わり」があることを前提にしていませんか?
  • 問2:まさか、「追い付くこと」だけで終わりではないですよね?
  • 問3:いろいろなことに縛られすぎていませんか?

 今回は、これらの問いを絡めながら、「AUTOSARを使いこなす」ということを考えていきたいと思います。

問1:「終わり」があることを前提にしていませんか?

 「使いこなす」という言葉は、発するのは簡単でも、やりきろうとしたらとても難しく、とてつもなく重いものです。

 ところで、上記の書き出しで、あまり意識せずに「やりきる」という言葉を使ってしまいました。どこかに終わりがあることが前提になっているこの言葉、「AUTOSARの使いこなし」に当てはめた場合に、意外な問題を引き起こしているかもしれません。以降、少しそのことについて考えてみたいと思います。

 本連載の後の回でご紹介いたしますが、AUTOSARは現在も変化を続けています。自動車システムに対する要求やその実現の方法(システムに利用されるものや、開発のやり方、そして最終的に出来上がるシステムそのものの姿)の絶え間ない変化に対応するためには、AUTOSAR自体も変化していきます。

 もちろん、AUTOSARそのものの利用が打ち切られるときには、さすがに変化は止まるでしょう(ソフトウェアの「最終バージョン」と同じ)。しかし、自動車システムにまつわる変化に対応させ続けるために、AUTOSARを使っている各社がさまざまな変更の提案を行っているわけですし、最近は、国内からの提案も増えてきました(ようやくです)。そう考えれば、変化はまだ続くと考えるのが自然でしょう。

 このように変化し続けるものに対しては、変化に終わりがあることを前提とした何らかの固定的な課題の達成のような(なじみ深い)タイプの目標だけではなく、変化そのものへの追従の仕方を洗練させること(プロセス構築など)のようなタイプの目標も設定することができます。

 AUTOSAR導入の際に限らず、一般的には、前者の固定的な課題達成型の目標、つまり、「○○という課題をクリアすれば完了」というような、終わりがあるタイプの目標だけが設定されてしまうことは今も珍しくありません。

 しかし、仮に前者のタイプの目標だけで進めるにしても、十分な知見を持ってAUTOSAR導入に取り掛かれることはまれだと思います。実際にやってみて初めて分かることも出てくるでしょう(図1)。ですから、ある程度まで進めたところで、当初想定した課題が妥当か否か、そして、他にも取り組むべき課題はないか、と見直すことが自然だと思いますが、いかがでしょうか。

 そして、このような課題の設定の仕方は、まさに、「終わり」のない、後者のタイプの目標につながっていきます。

図1 図1 視点が高くなれば、地平線の先に隠れていた「新たな課題」が見えてくる(クリックで拡大) 出典:筆者作成

 そろそろ、どのような課題を設定すればよいか、あるいは、既に設定している課題をどう見直すべきかと悩み始めた方もいらっしゃるかもしれません。が、しかし、悩み始めるのはまだもう少し待ってください。

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