車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第5回では、第4回で挙げた避けるべき代表例の1つ「標準をただ従うものとして捉えること」について掘り下げてみよう。
前回の第4回は、避けるべきことの代表例として、「AUTOSARが不可避なプロジェクトの経験からその可能性を見限ってしまうこと」「安易な中間ソリューションの採用」「標準をただ従うものとして捉えること」をご紹介しました。
今回は、これらの中で最後に挙げた「標準をただ従うものとして捉えること」がなぜ問題となるのかについて理解を深めていただくために、「標準」「標準化」についてもう少し掘り下げてみましょう。
AUTOSARの公式Webサイトには、現在の加入企業や団体の一覧が掲載されています。2018年8月19日時点では、AUTOSARでの標準化活動に参加できる資格を持つ企業/団体として、コアパートナー(Core Partner、CP)9社の中にトヨタ自動車(計1社)、プレミアムパートナー(Premium Partner、PP)57社の中にAPTJ、デンソー、イーソル(私の現在の勤務先です)、ホンダ、ジェイテクト、NEC、日産自動車、パナソニック、ルネサス エレクトロニクス、SCSK(計10社)、そして、デベロップメントパートナー(Development Partner、DP)47社/団体の中に名古屋大学のNCES(計1団体)が日本から名を連ねています。
ところが、実際の標準化活動においては、既に前回の記事でお伝えしたように、参加者はそう多くありません。このご時勢ですから、日本企業の海外拠点の方のみがご参加というケースもありますが、日本のニーズの反映度合いとなると、日本人参加者数が1つの目安になるでしょうから、まずはそちらを見ていきましょう。
名簿上は、現在、約300のAUTOSAR文書に対して100人超のドキュメントオーナー(document owner)がアサインされている中、日本人は私を含め3人です(イーソルから2人、もう1社から1人)。総勢100人以上のドキュメントオーナーの中でたったの3人、約300の文書の中で4文書を担当しているだけなのです。
もちろん、先述のCP/PP/DPは標準化活動への参加が権利でありかつ義務でもあります。ですから、日本の方々のお名前も、標準化を行う各種活動部会(working group)、つまり、AUTOSAR Classic Platform(CP)におけるワークパッケージ(Work Package、WP)とAdaptive Platform(AP)におけるフィーチャーチーム(Feature Team、FT)に多数の登録があります。
ただ、多くの方はFT-ST(Feature Team System Test)へのご登録であり、機能仕様やメソドロジー(Methodology)などを定義する他のWP/FTでお見かけすることはほとんどありません。
実際、私の参加する通信とセキュリティ、マルチコア関連のWPには、私以外の日本人参加者はほとんどいない状況です。毎週の電話会議や毎月の対面形式の会合に、時折、お一人が参加されることがあるくらいです。
自動車産業における日本企業(自動車メーカーや各種サプライヤー/ベンダー)の会社数や存在感と比較すると、とても少ないと思うのですが、皆さまはどうお感じでになられますか。
また、少ないことで、何か問題があるのでしょうか。もちろん、大いに問題がありますので、以降、それについてみていきましょう。
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