ホンダは宇宙へ、離着陸実験成功の「サステナブルロケット」実機を披露Japan Mobility Show 2025

ホンダはジャパンモビリティショー2025で、2025年6月に離着陸実験に成功した「サステナブルロケット」の実機を公開した。再使用型機体と再生可能燃料で持続可能な宇宙輸送を目指す。【訂正あり】

» 2025年10月30日 14時30分 公開
[安藤照乃MONOist]

 ホンダは「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2025」(プレスデー:2025年10月29〜30日、一般公開日:同年10月31日〜11月9日、東京ビッグサイト)において、同年6月に北海道大樹町で離着陸実験を行った、再使用可能なことを特徴とする「サステナブルロケット」の実機を披露した。

【訂正】初出時、タイトルに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。[編集部/2025年10月30日17時50分]

動画 「サステナブルロケット」の機体と、ホンダ 取締役代表執行役社長の三部敏宏氏の宇宙モビリティ開発に関する意気込み[クリックで再生]

サステナブルロケットの実験機 サステナブルロケットの実験機[クリックで拡大]

 今回展示した実験機は、外形寸法が全長6.3m×直径85cmで、乾燥重量900kg/燃料込み重量1312kg。機体には推進力を生み出す「燃焼器」、上昇/下降時に機体を安定させるための「制御翼」、着陸時の衝撃を吸収する「着陸装置」を備えている。

 「ホンダの四輪車や航空機であるホンダジェット、F1レーシングカーといった多様な製品開発を通して培ってきた燃焼技術や機体の制御技術などを生かすことで、段階的に技術課題をクリアしてきた」(ホンダの開発担当者)という。

左から燃焼器、制御翼、着陸装置の技術イメージ 左から燃焼器、制御翼、着陸装置の技術イメージ[クリックで拡大]出所:ホンダ

 ホンダは2019年より宇宙領域の研究をスタートした。現在のロケットは打ち上げ費用が非常に高額であり、活用のハードルが高いことから、再使用可能なサステナブルロケットの開発に踏み込んだ背景がある。ホンダはサステナブルロケットの開発を通じてロケットの打ち上げコストを低減し、人工衛星の活用拡大や、新たな宇宙輸送手段の提供を目指す考えだ。

(左)ロケットの先端部分と(右)着陸装置部分[クリックで拡大]

高度300mでの実証成功、2029年に準軌道の到達目指す

 ホンダは2025年6月17日、北海道大樹町の同社専用実験設備にて、この実験機を用いた離着陸実験を実施した。実験の目的は、ロケットを再使用するために不可欠な、上昇/下降時の機体の安定性や、垂直姿勢での着陸機能といった要素技術を実証することである。

2025年6月に北海道で行った離着陸実験の様子 2025年6月に北海道で行った離着陸実験の様子[クリックで拡大]出所:ホンダ

 実験の結果、機体は高度271.4mまで到達し、目標地点から37cmの誤差で着陸した(飛行時間56.6秒)。目標としていた機体の離着陸挙動の確認とデータ取得を実現し、実験は成功を収めた。開発担当者は「今回の実験において、ロケットに求められる要素技術の検証は全て済んだといってもいい」と成果を強調した。

ホンダの三部敏宏氏 ホンダの三部敏宏氏

 ロケットの実用化に向けてはより機体を大型化する必要があり、ホンダは次のステップとして機体の大きさに合わせた技術技術拡張を進めるとともに、2029年に高度100km以上の準軌道へ到達を目指す。

 ホンダは今回のJapan Mobility Show 2025で、「“夢”の力が生み出した陸・海・空、そして宇宙のモビリティ」をコンセプトに掲げ、「Honda 0(ゼロ)シリーズ」の新型EVプロトタイプ「Honda 0 α(ホンダ ゼロ アルファ)」なども世界初公開した。

 同社 取締役代表執行役社長の三部敏宏氏はプレスブリーフィングにおいて、「ホンダは夢を本気にしてきた会社だ。ロケットの開発はまだその一歩を踏み出したばかりだが、従業員一人一人の挑戦こそが、未来を切り開き、他にはない価値を生み出していく」と語った。

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