デルタ電子は2018年10月9日、DLP(Direct Light Projection)方式では世界初となる8K(7680×4320)レーザープロジェクター「INSIGHT Laser 8K」について、国内販売を開始したと発表した。同製品はレーザー光源と3板式DLP、高速画像処理を組み合わせたことが特長で、高解像度、高輝度、高コントラストの映像を投影できる。
デルタ電子は2018年10月9日、東京都内で記者会見を開き、DLP(Direct Light Projection)方式では世界初となる8K(7680×4320)レーザープロジェクター「INSIGHT Laser 8K」について国内販売を開始したと発表した。同製品はレーザー光源と3板式DLP、高速画像処理を組み合わせたことが特長で、各種業務用途で高解像度、高輝度、HDRな高品位映像を投影できる。
デルタ電子は、パワーエレクトロニクスやFAとBA(ビルディングオートメーション)、そしてデータセンターや再生可能エネルギーを対象としたインフラストラクチャを主な事業領域としているが、同製品を含めたディスプレイソリューションは同社パワーエレクトロニクス事業の一翼を担っている。
デルタ電子の創業者で名誉会長のBruce Cheng(ブルース・チェン)氏は「デルタ電子では8K技術の開発を積極的に進めているが、2018年12月より実用放送(新4K8K衛星放送)を計画している日本市場への参入は重要だと考えている。2020年に開催する東京五輪も8K技術を広める絶好の機会だ。この映像革命の一端を担えることを誇りに思う」と8K技術に関する同社の考えを語る。
同社の8K普及に向けた取り組みの一環として、富士ソフトより協力を得て320インチスクリーンを擁する富士ソフトアキバプラザのアキバシアターに同製品を常設。同製品の8K映像を体験できるショールームとして、またコンテンツ制作会社など映像関連企業の8Kプラットフォームとして同所を活用する方針だ。
同製品の開発は、電源や放熱技術に強みを持つデルタ電子、同社子会社で業務向け映像機器を手掛けるDigital Projection、画像処理技術を得意とするアストロデザインの3社による共同プロジェクトにより進められ、「世界最高性能の8Kプロジェクター」(チェン氏)とデルタ電子が胸を張る製品となった。
光源はデュアル構成の青色半導体レーザーと黄色蛍光体を組み合わせ、2万5000ルーメン(ANSI)の高輝度を実現。HLG(ハイブリッドログガンマ)方式のHDRもサポートしている。また、ヒートパイプを用いたデルタ電子独自の高効率放熱技術によって光源の完全密封に成功し、2万時間以上の光源寿命を達成した。
投影方式には3板式DLPを採用しており、搭載するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)チップは1.38型4K解像度モデルを使用している。Digital ProjectionのCEO(最高経営責任者)を務めるKengo Ka(ケンゴ・カ)氏は、8K解像度への対応について「ネイティブ8KをサポートするDMDチップはサンプル段階を除いて製品化されていない。われわれは8K対応を訴求していく中で、8Kの画素数である3300万画素を1スクリーンで実現したため8K対応とうたっている」と説明する。
4KのDMDチップから8K映像を投影する技術については「企業秘密」とするが、発表資料からは8K信号を4つの4K信号に分割しサブピクセルレンダリングで8K映像を得ていると読み取れる。対応する入力信号はSDI接続時に最大8K60pとなっている。
また、他のディスプレイ技術、特に業務利用向け大型ディスプレイとして競合となるファインピッチLEDビデオウォールよりも「設置やメンテナンスコストが低い」(同氏)ことがDLPプロジェクターのメリットとしている。
記者会見の質疑応答では、今後ますます高品位化する映像ソースへの対応について問う声が多かった。
8K120pへの対応は「現在取り組みを進めている」(カ氏)とするが、画像処理能力がボトルネックになっているという。カ氏は「8K120pの処理は、4K480pと同等の画像処理能力が求められる。しかし、4K480pの処理には(画像処理チップに)膨大なバンド幅が必要であり、恐らく現時点で処理に対応するデバイスはない。そういった状況で、どのように処理すべきかを検討している」との認識を示した。
また、BT2020の色域対応について問われると、「技術的にはRGBレーザーを光源とすることで簡単に実現できる。ただ、5万ルーメンや6万ルーメンといった高輝度を達成しつつも常識的な価格とするためには、サプライチェーンを含めた生産体制を構築する必要がある」(同氏)とし、デルタ電子との協力関係で解決可能だと説明した。
同製品のメーカー想定価格は4000万円程度。パブリックビューイングやシミュレーションの可視化、プラネタリウム、スポーツイベントなどの各種大画面を用いる用途に向くとしている。
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