京都大学は、反社会性パーソナリティー障害である「サイコパス」が、ためらうことなく、半ば自動的にうそをついてしまう傾向があり、その背景に前部帯状回の活動低下があることを実証した。
京都大学は2018年7月19日、反社会性パーソナリティー障害の「サイコパス」が、ためらうことなく、半ば自動的にうそをついてしまう傾向があり、その背景に前部帯状回の活動低下があることを実証したと発表した。同大学こころの未来研究センター 特定准教授の阿部修士氏と、米ハーバード大学、米ニューメキシコ大学の共同研究による成果となる。
サイコパスには、良心の呵責(かしゃく)や罪悪感、共感性の欠如などに加え、平然とうそをつくという特徴が見られる。研究グループは、うそをつく行為に関わる神経基盤を探るため、刑務所に収監中の囚人を対象に、車での移動が可能なmobile MRI装置を用いた脳機能画像研究を実施した。実験では、うそをつく割合を測定する心理学的な課題(コイントス課題)を実施中に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳活動を測定した。
この課題のデータを分析した結果、当初の予想とは異なり、サイコパス傾向とうそをつく頻度との関連はなかった。過去の先行研究におけるデータと比較すると、全体的に囚人の実験参加者はうそをつく頻度は高かったものの、参加者の中でサイコパス傾向とうそをつく頻度との間の相関は認められなかった。
しかし、うそをつく頻度が高い「うそつき」の参加者に絞ってデータを分析したところ、サイコパス傾向が高いほどうそをつくかどうかの意思決定の反応時間が早い傾向が認められた。また、それと対応するように、葛藤の検出などの心理過程に関わるとされる前部帯状回の活動が低いことが分かった。つまり、サイコパス傾向が高い参加者では、うそをつくか正直に振る舞うかという葛藤が低下しており、ためらいのない素早い反応時間でうそをついていると解釈できる。
ただし、前部帯状回の活動低下は、同研究で用いたコイントス課題特有の活動パターンである可能性があり、前部帯状回に器質性の脳損傷があるという結論を導くものではないとしている。
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