不具合の連鎖を断つ、品質問題発覚時の展開ステップと対応策:IoTによって製品品質を向上する(5)(2/2 ページ)
図1の展開ステップを2カ月で実施する進め方を図2で説明しています。
図2 分析の進め方(クリックで拡大)出典:KPMGコンサルティング
1カ月目が終わるころから、最後に実施計画が着実に実施できるように、PDCAサイクルの回る仕組みを構築します。しかし、筆者はこれまで、いくつかの会社で実施計画まではできても、実施に移せない場合を見ました。プロジェクトを早く、円滑に進めるために、最初は外部のコンサルティング会社などの専門家に依頼するのもよいでしょう。品質保証体制の在り方や先進企業の事例共有などは、自社のレベルを認識する上でも重要です。
品質不具合が発生している会社に共通していることは、一見小さな品質不具合だとしても、追加で不具合が発生しさらに深刻な問題が次から次へと出てくるというものです。
その場しのぎの対策や対応だけでなく、企業文化や体制を変えるということまでを考えないと根本的な品質問題は解決しません。また、品質問題はより革新的な新製品や市場拡大に必要なテーマだと認識すべきです。
IoTはそのための1つの効果的な道具です。IoTを用いてどんなことができるかと検証すべきフェーズは既に終わっていると筆者は考えます。実際にIoTを活用した品質向上の実践フェーズとなっています。グローバルで高品質を達成できている企業はこれらをうまく活用しています。先進テクノロジーをうまく活用し、グローバル化やネットワーク化などの進む新たなモノづくりの時代に最適な品質を実現することが重要です。これらが実現できた企業は、売上高や利益を向上させ、ビジネスをさらに拡大させています。日本の製造業がこうした流れに前向きに取り組めるように、本連載をご活用いただければ幸いだと考えます(連載完)。
田中孝史(たなか たかし)
KPMGコンサルティング
製造セクタ ディレクター
マネジメントコンサルタントとして、世界各地の製造業のコンサルテーションを実施した経験を有する。また、プロジェクトリーダーとして、製造業の企画・コンセプト、R&D、設計、生産技術、生産、ロジスティクス、販売・サービスと全てのライフサイクルを手掛ける。自動車、航空機、電気製品、衣服、医療機器など、対象とする産業も幅広い。
- QAネットワークとAIの適用
IoTの活用が広がりを見せていますが、上手に活用すれば製品品質の向上につなげることも可能です。本連載では、最新の事例を紹介しながら、IoTを使って製品の品質をどう向上させるかについて説明していきます。第4回となる今回は、「QAネットワークの最新動向とAIの適用」をテーマに解説します。
- 品質保証の体制をIoTでカイゼンする
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第3回となる今回は、品質保証体制へのIoT活用のポイントについて紹介します。
- 全員参加の生産保全、TPMとは何か?
本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPMとは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説していく。第1回となる今回は、まず「TPMとは何か」について紹介する。
- 「アメーバ経営」とは何か
グローバル競争の激化により多くの日系製造業が苦しむ中、にわかに注目を浴びているのが「アメーバ経営」だ。京セラをグローバル企業に押し上げ、会社更生法適用となったJALを復活させた原動力は何だったのか。本連載では、「アメーバ経営とは何か」を解説するとともに、その効果を示す事例としてJAL整備工場での変化について紹介する。第1回となる今回は「アメーバ経営」そのものを紹介する。
- 「標準時間」とは何か?(前編)
日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第3回では、製造企業の現場で間違って認識されていることが多い「標準時間」について正しく理解するために、その定義や構成について解説する。
- あなたが品質管理で果たすべき役割は何か
製造現場で実施する製品管理を中心とした品質管理の基本を解説する。組織における品質管理の在り方から先人の教訓まで、筆者の経験とノウハウを紹介。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.