板金加工機械大手のアマダは2018年5月から中小板金工場向けのIoTソリューション「V-facatory」の本格展開を開始したアマダ 執行役員 ベンディング事業本部長 アマダIoT(V-factory)推進プロジェクトリーダーの横山匡氏に話を聞いた。
板金加工機械大手のアマダは2018年5月から中小板金工場向けのIoT(モノのインターネット)ソリューション「V-factory」の本格展開を開始した。スマートファクトリー化が加速する動きを受け、製造機械メーカーが機器のIoT対応と、サービスビジネスを展開する動きは1つのトレンドとなっているが、アマダでは「何はともあれ、まずは見える化」と機器の見える化に注力する姿勢を示す。その背景には製造機械の中でも「板金」が抱える難しさがあるとする。
なぜアマダはIoTソリューションの展開に踏み切り、そして「見える化」にこだわるのか。アマダ 執行役員 ベンディング事業本部長 アマダIoT(V-factory)推進プロジェクトリーダーの横山匡氏に話を聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist スマートファクトリー化などIoTやITを活用した新たな工場への取り組みが進んでいます。こうした動きについてどう捉えていますか。
横山氏 板金加工機械では、実はIT活用の動きは1990年代から始まっていた。工場内での作業の中で、板金によるモノづくりは、アセンブリー構造が多く工程が1つの流れで進まないことも多い。パーツを組み合わせる他、さまざまなアプローチが可能なので、多品種変量型のモノづくりが要求される。マシンや人作業の連携が乱れると、一気に生産効率が低下する。それを何とかしたいというのがわれわれの過去からの思いだ。そのためには工程連携でモノの停滞をなくすことが重要だと考えた。そこで効果的な工程連携を実現するために「IT活用で解決できないか」とさまざまな取り組みを進めてきた。
ただ、結論としては、それほど有効な価値を生み出せなかったというのが現実だ。IT化を進めることで生産計画の共有などはできるようになった。しかし、当時はマシンから情報が取得できずに手入力しなければならないところなども多く、結果としてマシンがどのような状況にあって、どのような加工を行い、それがどのような品質なのか、という現場の作業情報は、われわれも正しくは分からない状況だった。
われわれの機器のユーザーの7割は中小製造業となるが、生産計画と現場実績との乖離(かいり)が常に発生する状況になり、効率的な現場の確立は難しかった。さらに、最近では急な飛び込み仕事が入ったり、急な納期の変更があったりすることが頻繁に起こる。こうした変化が起こるとまた工程順などを組み直す必要があり、変更対応などに追われることになる。いろいろ調べたが、中小製造業で使われているわれわれの機器の稼働率も期待ほどは高くない場合が多いという残念な状況が生まれていた。
われわれはユーザーに対してさまざまな価値を提供するために、マシンの機能や性能の向上を推進しているが、中小製造業の現場ではそのマシンを使う場面以外の場面でさまざまな問題が発生していることに気づいた。そこで、これらの改善などにも踏み込み「機械の最高のパフォーマンスを活用してもらえる場を作るためにどうするか」というアプローチが必要だと考えた。そのためにはまずはマシンの状況を的確に負担なく取得し可視化することが重要になる。こうした背景から中小企業の板金工場向けのIoTソリューション「V-factory」を立ち上げることになった。
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