MONOist ただ「見える化」に特化するとしてもスマートファクトリー化の動きが出てくる中で、工程全体や工場全体の情報を見たいとするニーズがあるのではないでしょうか。
横山氏 先述した通りアマダの板金加工機械のユーザーは数多くが中小製造業だ。「V-factory」の展開においてもモデルケースとして3つのケースがあると想定している。
1つ目がIoT設備がなく、使っている製造装置がアマダ製のものだけである場合だ。この場合はまずはアマダがIoT化そのものをサポートする形となり「V-factory」でまずは「見える化」を実現していくというのが、当面の目標になる。アマダのユーザーにはこのケースが実は多い。
2つ目のケースが、IoT設備は現状はないが、使っている製造装置でアマダ製品と他社製品がある場合だ。これは両方の機材がそれぞれ「見える化」できるのが望ましい。使っている機器の比率や、ユーザーが使っている他の機械メーカーがIoTソリューションをどう展開しているのか、という状況を見ながら、最適な環境を作り出していく必要がある。
3つ目のケースが、大手製造業などに見られるパターンで、IoT基盤などは独自で整備ができており、使っている生産財は、アマダ製品もあれば他社製品もあるというものだ。この場合は、顧客のIoT基盤に機器をどう接続して情報を上げるのかという接続性の観点が必要になる。「V-factory」で情報連携を実現する通信機器「V-factory Connecting Box」は、OPC UAなどに対応している他CSVファイルを生成することも可能で、これらの機能を生かして接続性を実現していく。
MONOist 「V-factory」の展開を2018年5月に開始しましたが、当面はどのような目標を掲げていますか。
横山氏 「V-factory」は、アマダのNC装置付きマシンを導入していれば、通信機器「V-factory Connecting Box」を接続するだけで生産情報を取得でき、Webアプリケーションの「My V-factory」を利用して情報共有が可能となる仕組みだ。
ただ、やみくもに普及を広げようとは思っていない。本当に実現したいのは「工程改善」であり「マシンが最高のパフォーマンスを発揮できる環境」である。「V-factory」を通じて、どういう情報を取得して活用したいのかというのが重要で、そのためにはある程度のコンサルテーション的な作業が必要になる。顧客との対話をじっくり進めて、その中で必要となるものが見えた場合に活用してもらうという取り組みを進めていく。
2018年度は国内中心の取り組みとするが、その中で200〜300社の導入を目標としている。これらの取り組みをモデルケースとして、活用の成果などを築き、それをベースにさらに伸ばしていければよいと考えている。
MONOist 中長期的な目標としてはどのようなことを考えていますか。
横山氏 繰り返しになるがアマダが描く理想の工場は「マシンが本来のポテンシャルをいかんなく発揮し最高のパフォーマンスが得られる環境」である。設備稼働率を究極まで高めていく。その状況に近づけるために取り組みを進めていく。
IoTにより機器の情報がリアルタイムに見えるようになり、生産計画との乖離などもリアルタイムに分かるようになった。現場作業が見えるようになれば、また次の工程改善のポテンシャルが生まれてくる。それを1つ1つ高めてノウハウ化していくことで、理想の姿に近づけていけると考えている。
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