取材時の強烈な印象は、透過度だ。実験時、タンク内の透過長は約100mに保たれている。改修工事の関係で透過度は低下しているはずだが、それでも約40m先の底にある光電子倍増管がはっきりと見えた。また写真ではタンク内は青くなっているが、環境光が戻ってきたときに青の波長だけに近いためだ。
少し脱線してしまうが、研究所関連取材の撮影時に愛用しているカメラ用レンズ「Voigtländer MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」とPL(偏光)フィルターを持ち込まなかったのは失敗だった。もっとキレイに色を拾ってくれたハズだ。
作業工程は、タンク内の超純水を抜きつつ各種工事を進め、2018年8月中旬に水を抜ききった状態にして底部の改修工事を行う計画となっている。同年10月初頭より再びタンク内に超純水を注ぎ年内の実験再開を目指す。2019年中には、超新星背景ニュートリノの観測や、さらなる発見があるものと思われる。
今回の工事の関係で、スーパーカミオカンデの一般公開コースは変更される。ただし、工事期間中の中高生向けの団体見学や体験会では、クリーンルームの手前まで案内があり、タンク上部の様子を見ることができる予定だそうだ。安全の確保と作業スケジュールの関係で難しいと思われるが、開口部にアクリル板を置くなどして、転落の危険性を排除し、子供たちが光電子倍増管を目視できるようにしてもよさそうに感じた。
おっさんである筆者でさえワクワクしたくらいなので、子供はその比ではないだろうし、より科学に興味を持つのではないだろうか。強烈な原体験は一生モノだ。モノづくりは、つくるだけでなく、その周知も課題となる。いいモノでも知られなければ意味がない。また当たり前に接しているものが、広報資産となり得ることがある。スーパーカミオカンデであれば、タンク内部の強烈なビジュアルがそれに該当する。今回は研究所のレポートだが、広報といった点では企業の場合でも変わりないものだ。もう1度、自社を見直してみて広報資産を発掘してほしい。若手の確保を重要視しているのであれば、なおさらだ。
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