12年ぶりにスーパーカミオカンデのタンク内部が公開された。若手への技術継承も兼ねる改修作業が進められている。
2018年6月10日、岐阜県神岡町にある宇宙線研究所「スーパーカミオカンデ」において、報道陣向けの見学会が開催された。スーパーカミオカンデの改修工事に伴う形で実施されたもので、約12年ぶりとなるタンク内部の公開もあった。今回はその様子をお送りする。
スーパーカミオカンデは、1996年からニュートリノや陽子崩壊の観測を行っている研究施設で、世界最大となる直径39.3×高さ41.4mの水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置を有している。前身のカミオカンデ時代を含むと、2回のノーベル賞の受賞に関わる施設であるため、その名前を知る読者も多いだろう。
もっぱら、宇宙から届くニュートリノの観測のみというイメージをもたれがちだが、約295km離れた茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設「J-PARC」からニュートリノビームを撃ち込むT2K(Tokai to Kamioka)実験によるニュートリノ振動の観測も行っている。
なお、ニュートリノとは、物質を構成する最小単位である素粒子の1つである。同じ素粒子で、ニュートリノよりもはるかに身近な電子と比べると、いまだによく分からない物質で、スーパーカミオカンデによって質量があると分かった段階だ。太陽から地球に届くニュートリノは地球表面1m2当たりで毎秒600兆個。地球を貫通する過程で反応する確率は0.00000002%と低く、太陽以外にも全方位からやってきて、われわれの身体を突き抜けている。
今回の改修工事は2018年5月31日から開始されており、2018年内のニュートリノ観測再開を予定している。4度目の改修工事(2008年の信号系統のアップデートを含めると5度目)の目的は、超新星爆発で生じたニュートリノ、超新星背景ニュートリノの観測性能の向上だ。1987年にカミオカンデで初観測しているが、以降は観測できていない。宇宙全体からすると、超新星爆発は数秒に1回くらいは起きており、超新星爆発背景ニュートリノは人間の手のひらを毎秒数千個は通り過ぎていると考えられている。
そうであれば、スーパーカミオカンデのタンク内で年に数回の反応があるハズなのだが、他のノイズに埋もれてしまい、区別ができていなかったという。そこで超純水にガドリニウムを混ぜ、最も反応しやすい反電子ニュートリノの観測を目指していく。東京大学 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設長の中畑雅行氏は「とても特徴的な光で、信号ノイズと識別しやすくなる」と語っている。
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