ブリヂストンは2018年5月17日、東京都内で会見を開き、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた「世界初」(同社)のポリマー材料「High Strength Rubber(HSR)」の開発に成功したと発表した。2020年代をめどに事業化を進めるとともに、オープンイノベーションによって開発を加速し、タイヤなどブリヂストンの事業範囲にとどまらない展開の拡大も目指す。
ブリヂストンは2018年5月17日、東京都内で会見を開き、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた「世界初」(同社)のポリマー材料「High Strength Rubber(HSR)」の開発に成功したと発表した。2020年代をめどに事業化を進めるとともに、オープンイノベーションによって開発を加速し、タイヤなどブリヂストンの事業範囲にとどまらない展開の拡大も目指す。
HSRでは、新たに開発したガドリニウム(Gd)触媒を用いることで、合成ゴムの原料であるブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンと、樹脂の原料であるエチレンなどのオレフィンが1つの分子鎖の中で結び付くように共重合させることに成功した。一般的な合成ゴムよりも耐破壊特性が高い天然ゴムと比較して、耐亀裂性が5倍以上、耐摩耗性が2.5倍以上、引張強度が1.5倍以上という性能を有する。ゴムのしなやかさと樹脂の強靭(きょうじん)さを兼ね備えた次世代材料である。
同社 常務執行役員 グローバルイノベーション管掌の松田明氏は「HSRは、タイヤなどに適用してきた当社独自の高分子複合体技術におけるイノベーションとなる。柔らかいゴムと固い樹脂を1つの分子の中で両立した、世界初のポリマーだ。天然ゴムよりも耐破壊性がはるかに高いということは、タイヤの大幅な軽量化が可能になるので、次世代モビリティに大きく貢献できるのではないかと考えている」と語る。
タイヤを主力事業とするブリヂストンは、タイヤの50%を占める主原料のゴムの研究開発に注力している。中でも重視しているのが天然ゴムの代替材料だ。タイヤのゴムは、天然ゴムが6割、合成ゴムが4割使用されている。化学技術が進歩する中でも、合成ゴムよりも強度や耐久性に優れる天然ゴムはタイヤに必要不可欠な材料なのだ。
ただし天然ゴムは、パラゴムノキなどから得る農作物であり、毎年の収量が安定しているとはいえない。また今後拡大するであろう需要に対して、必ずしも安定供給できるとは限らない。ブリヂストン 中央研究所 フェローの会田昭二郎氏は「その課題を合成技術でカバーするために、天然ゴムを代替、超越するポリマーの研究開発に取り組んでいる」と強調する。
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