空飛ぶクルマ実現に一歩一歩、2025年に発売目指す国際ウエルディングショー

溶接・接合技術関連分野の展示会「国際ウエルディングショー」(2018年4月25日〜28日、東京ビッグサイト)で、「空飛ぶクルマ『SkyDrive』、次世代モビリティへの挑戦」と題してCARTIVATOR Resource Management 代表理事の福澤知浩氏が特別講演を行った。

» 2018年05月28日 10時00分 公開
[長町基MONOist]

 溶接・接合技術関連分野の展示会「国際ウエルディングショー」(2018年4月25日〜28日、東京ビッグサイト)で、「空飛ぶクルマ『SkyDrive』、次世代モビリティへの挑戦」と題してCARTIVATOR Resource Management 代表理事の福澤知浩氏が特別講演を行った。

空飛ぶクルマの実現を目指す

 CARTIVATOR(カーティベーター)は、「モビリティを通じて次代に夢をつなぐ」ことをテーマにした、日本発の空飛ぶクルマを開発する有志の組織で2012年に発足した。現在は2020年東京オリンピック・パラリンピック大会での発表、2025年の第1モデル発売を目標としている。資金資材の管理と団体の運営をCARTIVATOR Resource Managementが担い、活動と開発は若手技術者やベンチャー関係者を中心とする有志の参加者が推進する。

photo CARTIVATOR Resource Management 代表理事の福澤知浩氏

 現在、同組織が製作を進めているSkyDriveは羽根が4カ所、タイヤを3カ所搭載する「走って飛ぶ車」だという。組織の名称であるCARTIVATORは「CAR(クルマ)」と「CULTIVATOR(開拓者)」を組み合わせた造語で、自動車、航空機、銀行、IT、コンサルティング、システム開発関連企業の社員が集まり、愛知と東京を中心に約100人のメンバーで活動している。

 目標は「モビリティを通じて次世代に夢を提供する」こと。目的としては、空を飛ぶことで意のままに移動できるというポジティブな面と、既存インフラである道路の渋滞の影響を受けないことや、インフラ自体が無くても移動できるということなどネガティブ面の解消だ。現在のロードマップとしては「2050年までには誰でもが自由に、空を移動できる時代にしたい」(福澤氏)と開発を進めている。

 空飛ぶ車については、2013年頃は5社が競合していたという。その中にはヘリコプターのような形で、地上では羽根を格納して走るというものや、ドローンのようなプロペラが付き垂直離陸ができるようなものがあった。その後、新規参入する企業などが相次ぎ今ではシリコンバレーを中心に40〜50社程度が乱立しているという。エアタクシーのようなニーズも高まっているようだ。

photo 空飛ぶクルマ「SkyDrive」のイメージ 出典:CARTIVATOR

2019年1月には有人飛行の試作機を製作

 同組織では空飛ぶ車を実現するためにまず、機体開発から進めた。まず、そこにはサイズの問題があった。「大きすぎると離着陸の場所に制限が出てくる。ヘリポートや飛行場を利用するのであれば、そこまでクルマで行くことになり、それではそもそも新たに空飛ぶクルマを開発する意味がなくなる。ドアツードアでなければメリットがないことから、どこでも発着できる世界最小サイズを目指した」(福澤氏)。開発を進めているモデルはプロペラを使わないときは一般的な乗用車と同程度のサイズとなる。そして、飛行にはプロペラを広げるというコンセプトだという。

 最初に、半年くらいの時間をかけて5分の1サイズの試作機を製作した。ドローンとラジコンを合わせたようなもので、2014年にその5分の1スケール試作機の試験飛行を行った。2015年には実サイズの試作機を作るため、クラウドファンディングを利用。2017年に取り組んだ実サイズの試作機の試験飛行では、いかに安定したホバリングを行うかが最大の課題となった。飛行が安定しない原因としてはモーターの慣性の影響による時間遅れが原因だということが分かった。それを解決するためにピッチコントロールによる揚力制御を行うことで対応した。

 この頃からトヨタ自動車をはじめ、大手企業や自治体からの支援が集まり始めたという。今後のスケジュールとしては無人機を開発し飛行試験を開始することを目指す。2019年1月には有人機を作り、その後有人機の飛行試験を始める計画だ。福澤氏は「2020年頃には、他の企業もデモフライトを行うことを宣言しており、その前にわれわれが実現したい」と意欲を見せている。

 ただ、デモフライトで重要となるのが国土交通省航空局との交渉であり「有人で飛行するためには100%安全であるということを証明する必要があり、これに対しても2017年秋からスタッフが専従で交渉を進めている」(福澤氏)という。

 無人機のデモフライトはひも付きで、屋内で始め、その後屋外に出して、最終的にはひもを外して飛行させるという順序で少しずつ前に進める形をとる。2018年8月くらいから公開のデモフライトを始める予定で、それに向けて現在も、部品提供、技術提供や支援金(100万円・30万円)の募集を行っている。支援者にはカーティベーターのおよび支援企業Webサイト上でのロゴマーク掲載、ノベルティの提供、活動見学などを準備している。

 ロードマップとしては2020年にデモフライトを確実に行い、2025年に発売を開始して、2030年から量産を開始することを目指す。その後、2050年には誰でもが飛べる時代を実現する計画だ。

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