ピッキング方法の判断をするAIはシミュレーションにより生成した画像と実画像により学習する。ピックアップする製品の3Dモデルを入力しシミュレーターでさまざまな荷積み状態をランダムで生成。それを上方から撮影した画像モデルを用意し実画像を加えた学習データとし、学習させる。これらによって実現した画像撮影シミュレーションと、エディンバラ大学との共同開発で実現したピッキング動作シミュレーションを組み合わせて、AGVの移動速度に応じて最適につかめる状態にある製品を判別するという仕組みである。
実証では、AIの学習に必要だった画像データが4万2000枚で、AGVの走行速度が毎秒0.3mと同0.5mの2パターンで実施。AGVで搬送中の物品の取り出しとケース内物品の位置や傾きに応じたAGVの速度変更、AGVの無停止による作業時間短縮の効果、などを検証した。
結果として、AGVを止めることなくピックアップできることで、従来技術により止まってピックアップするケースと比べて、38%の作業時間削減を実現できることを確認したという。
精度については認識率8割程度だというが「ピックアップしやすいものを選ぶので、全ての製品を認識できなくてもよい。認識率は8割でもピックアップの成功率はそれよりも高い」と日立製作所 研究開発グループ デジタルテクノロジーイノベーションセンター 主任研究員の木村宣隆氏は述べている。
同技術は主に物流や倉庫を対象としているが、実導入に向けた課題としては「まだ学習に必要な実画像が多く必要だという点が課題だ。これをどうやって低減するのかが重要。現状はまだ研究レベルだが、完璧な形にするのは当面は難しい。導入できるところから切り出して導入できるようにしていきたい」と木村氏は今後の抱負について述べている。
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