製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第17回となる今回は、あらためてスマートファクトリーへの取り組みと顕在化する課題などをまとめたいと思います。
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第16回:「日本版第4次産業革命「Connected Industries」とは? 」
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、日本政府が推し進める「Connected Industries」について意義などをまとめました。
まだ、広く知られているとはいえませんが、「Connected Industries(つながる産業)」は2017年3月に経済産業省が発表した日本の産業の目指す姿を示すコンセプトです(※1)。ドイツの「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」、フランスでの「Industrie du Futur(産業の未来)」、中国の「中国製造2025」などのプロジェクトに当たるもので、これらの各国の取り組みに対し、日本らしさや日本独自の点などを加えた取り組みやコンセプトの総称だといえます。
(※1)関連記事:日本版第4次産業革命「Connected Industries」とは?
海外のさまざまな施策に対し、「日本独自」の領域を世界に訴えていくべきだという考えから打ち出されたのが「Connected Industries」でしたね。
特徴的なのは「人間中心」という要素ね。
「日本の強みは現場力」とはよく聞きますが、「Connected Industries」にもそのコンセプトが織り込まれていることが最大の特徴だといえます。「人間中心」の「デジタル化」の在り方を模索し、人と機械が協調する世界を描くというのが、目指す姿だといえます。こうした考え方は「システム」を優先する欧米とは一線を画すもので、他にはない特徴になっています。
日本には、既に新たな「超スマート社会」を目指すとした「Society 5.0」などのコンセプトも存在し、新たなコンセプトを打ち出すことに意味があるのかという議論があることも事実ですが、「社会」とそれを構成する「産業」という形で、共に訴えていくものという位置付けになっているんでしたね。
「Society 5.0」は社会の変化を示したものね。「Connected Industries」は産業の在り方だから、「Society 5.0」の一部が「Connected Industries」だといえるわね。
こうした人間中心の日本らしい「つながる産業」の姿を一言で訴えられるようになったことで、新興国などこれから第4次産業革命に取り組んでいくようなところと協力しやすくなるという点が利点としてあるとのことでした。
さて、今回はあらためてスマートファクトリーへの取り組みと顕在化する課題などをまとめたいと思います。
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