さて、今日も矢面さんは印出さんに相談しに来たようです。
印出さん、こんにちは。以前にお話しした通り、グーチョキパーツでも自社工場でのIoT活用の実践を進めているんですが、やってみると大変ですけど、いろいろ気付きがあって面白いですね。
まあ、すごいじゃない。「ものづくり白書」でも紹介されていたけれど、やっぱり日本のIoT活用は製造現場主導で進んでいるんですって。
そうなんですね。確かに製造現場の立場から考えるとIT(情報技術)は少し面倒くさい存在だったんですが、「見たくても見えなかったところが見えるようになる」という感覚は非常に面白いですね。うちの工場でもみんな夢中になって「あれはできないか、これはできないか」と盛り上がってきましたよ。
やっぱり、まずやってみるということが大事だったというわけね。
経済産業省が毎年発行している「ものづくり白書」ではここ数年、第4次産業革命の動きを積極的に取り上げています。2017年版でもさまざまな調査が行われていますが、日本の製造業へのアンケートで「データの収集・活用の戦略・計画を主導する部門」という質問がありました。その中で最も多かったのが「製造部門」です。44.8%を占め、最大となりました。日本の製造業におけるIoT活用やスマート化への取り組みが、製造現場主導で進んでいるというところに「日本らしさ」が現れているように思います。
それで実際にやってみて、やっぱり、難しい部分がたくさんでてきたんですよ。
例えば、どういうことがあるの?
うちの製品の幾つかは組み立て工程があるんですが、その組み立て工程は今まで人手で行ってきたんですね。柔軟性があるし慣れてくるとどんどん改善も進むので。
確かにそうね。
でも、その人手の領域ってどうやってデータ化すべきなんですかね。変な装置を身に付けさせるのはみんな嫌がるし、以前も話しましたがちょうどよいツールがないんですよね。
確かに、現状、スマート工場化を進めるのにおいて、人手の領域をどうデータ化するかというのは課題となっているところです。
とにかく製品を普及させられれば良いという時代であれば、同じものをとにかく効率的に大量に生産する「マスプロダクション(大量生産)」方式が最適でした。自動化の設備や装置を開発するコストも吸収しやすいために、自動化も容易だったといえます。
しかし、最低限のモノが世界に行きわたるようになり、消費者の嗜好などを反映する必要が出てくると、個人のニーズが多種多様となるために、生産方式もそれに合わせて多品種少量生産に対応しなければならなくなります。さらにグローバル化が進み需要動向がさまざまな要因で変動するようになれば、変種変量生産に柔軟に対応していくことも求められます。
そういう中では、専用の製造装置や設備の使用は非常に難しくなります。どのくらい使うか読みにくい装置にコストや手間をかけられなくなるためです。そこで、人手によるセル生産が活用されるようになってきました。人は、ソフト面でもハード面でも専用設備に比べて柔軟性を持ち、なおかつコストも安いためです。
CPS(サイバーフィジカルシステム)を活用したスマート工場化を進めるにおいては、データの取得が前提となります。専用の製造設備を活用しているという場合は、装置が生み出すデータを取得できれば、あとはそれをどう回収し、分析するのかという方向性で話を進めることができます。
しかし、人手による領域については、どのようにデータ化していくべきなのかは判断が分かれます。
作業員にウェアラブル端末などを身に付けてもらい、センサーによりデータを取得するという方法も考えられますし、カメラなどの画像で一括で情報を取得しそれを画像認識技術により解析してデータ化する方法もあります。また、協働ロボットなど徐々に価格も下がり、設定もシンプルになり、使いやすさが高まってきたロボットや専用装置を活用することで、自動化をまず行って、データ取得を進めるという方法もあります。どういう方式が成功なのか、またどういう活用を行えば成果が出るのかという方法論についてはまだ確立されていません。
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