製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第16回となる今回は、日本政府が推し進める「Connected Industries」について意義などをまとめたいと思います。
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第15回:「第4次産業革命を支える「簡単でシンプルなIoT」の意義 」
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、ドイツのハノーバーメッセなどでも数多く出展された「簡単でシンプルなIoT機器」がなぜ意味があるのか、という点について取り上げました。
日本でも「簡単でシンプルなIoT」というような言葉があちこちで聞かれるようになっていますが、実際に製造業が現場に導入する場合、まだハードルが高いという状況が存在します。
ITベンダーとかの話を聞くと、「シンプルです」と言いつつも、すぐに「基盤となる情報システムから〜」とかの規模になるじゃないですか。そうなると調整も必要だし、簡単に始められるものではない気がするんですけど。
そこで最近注目を集めているのが、スタンドアロン型で本当に簡単に導入が可能なIoTのパッケージソリューションです。IoTや第4次産業革命と呼ばれる動きはほぼ全てがCPS(サイバーフィジカルシステム)の基本構造を取っています。情報を、センサーなどで収集し、サーバなどで蓄積し、蓄積したデータを分析し、それを現実世界にフィードバックするという仕組みです。
この仕組みの構造を理解できていれば、大きく会社全体を巻き込んで展開するのか、現場の一定領域だけで展開するのかなどの判断も可能です。そして、自社に必要なパッケージが見つからない場合、自社で汎用品などを組み合わせて作ることなども可能です。
それなら、自分たちで汎用品を組み合わせて作ってみたらどう?
実際にこうした仕組みを自社内で作って成功している愛知県の旭鉄工のケースなども紹介しました。さらに、こうしたオリジナルで作ったシステムが他社にもニーズがある場合、こうしたツールを外販し、自社の新しいビジネスとして立ち上げることもできるのでしたね。
す、すごいですね。弊社でもとにかくトライしてみることにします。
さて、今回は日本政府が3月に発表した「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」と、その意義は何かという点について解説していきます。
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