あらゆる現場で労働人口不足などが深刻化する中、その解決策としてロボット活用への期待が高まっている。しかし、現実的にはロボットを現場で実装するロボットシステムインテグレーターが不足しており、ロボット活用の裾野が広がらない状況になっている。経済産業省 関東経済産業局がまとめた「ロボットシステムインテグレーターに関する調査結果」の内容をまとめた。
人手不足の解決策としてロボット活用を――。あらゆる現場でこうした掛け声が起こっている。政府も「ロボット新戦略」の下、さまざまな施策を実施しており、さまざまな現場でロボット活用への意欲は高まってきている。しかし、ロボットはさまざまな作業に使える汎用性を持っている一方で、半完成品として出荷されており、実際に使用するにはシステムインテグレーション(SI)が必要になる。このSIがボトルネックになり、なかなか導入が広がらないというのが現実である。
経済産業省 関東経済産業局 地域経済部 情報政策課は2018年1月、こうしたロボットシステムインテグレーターの現状を調査した「ロボットシステムインテグレーターに関する調査結果(速報版)」を公開した。
調査は2017年6月〜10月にかけて実施され、全国38都道府県のロボットシステムインテグレーター374社を対象としたアンケート調査と、10社へのインタビュー調査を行った。アンケート調査の有効回答数は144社となった。
ロボットシステムインテグレーターの創業時の業種については「製造業」とした回答が60%と圧倒的に多く、もともとロボットシステムインテグレーターとして創業した企業はわずか3%にとどまっている状況である。業歴については「10年以上」とした回答が44%となり最多となったものの、「1〜5年未満」が30%を占めるなど、まだまだ業界として発展途上期にあるということが伺える。
同様に各社が抱えるロボットシステムエンジニアの数についても「1〜10人」が全体の69%を占めており、平均キャリアについても「10年未満」が多くを占めるなど、これからさまざまな整備を進めなければならないという状況が見える。
ロボット活用への期待感が高まる中で実際にビジネス面での引き合いはどうなのだろうか。調査によるとロボットSI業務の引き合いについて「増加」とした企業が73%を占めた。引き合いの内容については、「大企業(39%)」と「中小企業(37%)」の比率がほぼ変わらず、さまざまな企業からの引き合いが高まっている状況が見える。
一方で、工場外の用途での使用は限定的だといえ、引き合いが増加した企業業種については以前から使用が多かった「工場(自動車・電機)」が34%と最多となった。ただ「工場(食料品、化粧品、医薬品)」が18%、「工場(その他製造業)」が17%となっており、まずは工場内で従来使用していなかった領域でロボットの活用が広がっているという状況が伺える。
引き合いの増加があるため、売り上げが「増加」していると答えた企業は61%となっている。一方で、利益率について「増加」しているとした企業は26%にとどまっており、「横ばい」が50%と最多となった。自由回答として「仕事量は増えているが、エンジニアの社会的立場が低いため、業務内容に対して低い工数単価となっている」「引き合いは増えているが、受注単価はリーマンショック後から上がっていない」「発注側の技術力不足による情報開示力不足に起因するシステム再構築が主因と考える」などの指摘が出ており、ビジネスとしてはまだまだ厳しいのが現実だといえる。
一方で「中小企業へのロボット導入が進みつつあり、中小企業向け売り上げが増えた。また、強引な値引き要求などが無くなり適正価格での取引が増えた。社内の管理スキルを上げたことにより、生産コストが下がった」など、取引先が広がることでビジネス改善が進んだとする声も出ており、ロボットシステムインテグレーターの中でもどのようにビジネスを展開するかで明暗が分かれている状況もある。
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