2017年度までの平井社長体制で常に課題を抱えてきたのがエレクトロニクス5分野(リチウムイオン電池事業の売却前は6分野)だ。「プレイステーション 4」が好調なゲーム&ネットワークサービス分野、テレビ事業の構造改革に成功したホームエンターテインメント&サウンド分野、高付加価値化で競合他社に先行するイメージング・プロダクツ&ソリューション分野、イメージセンサーの販売が絶好調の半導体分野については、2017年度から2018年度にかけて好調を維持する見通しだ。
これら4分野と比べて厳しい状況にあるのが、スマートフォンを手掛けるモバイルコミュニケーション分野である。2017年度の売上高は前年度比4.7%減の7237億円、営業損益は同378億円悪化の276億円の損失となった。赤字になったのは、今後の販売台数の減少を見込んだ事業見直しによる将来におけるキャッシュフローの減少に合わせて、313億円の固定資産の減損を計上したことによるものだ。2016年度のスマートフォン販売台数は1460万台だったが、2017年度は1350万台に減少している。
2018年度のモバイルコミュニケーション分野の業績見込みは、売上高が前年度比11.6%減の6400億円、営業損益が同126億円改善の150億円の損失となる。スマートフォン販売台数見込みも1000万台まで引き下げた。
十時氏は、2014年秋から今回CFOに就任するまで、モバイルコミュニケーション分野を担当してきた。同氏は「依然として収益改善できていない事実は大変重く受け止めている」とする一方で、「次世代通信技術の5Gはスマートフォン以外のさまざまな製品で用いられるだろう。この5Gを手掛けて行くにはソニー社内で技術を有しておく必要がある。そこで得た5G技術はグループ全体に展開していくことになるだろう。そのためにも、モバイルコミュニケーション分野は、年間1000万台のスマートフォン販売台数で事業を継続できるような体制構築を進める。この方針は経営陣の総意でもある」と強調する。
また、CFO就任の抱負として「これまでソニーは5000億円以上の営業利益を継続して出したことがない。だからこそ、2018年度からの中期経営計画では、利益を安定して出し続けることが重要だ」(十時氏)としている
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